第24話 見せられないよ 1

「マーくん、きちんと溜めといた?w」

「は、はい……この日のために、今週は3人でヤってから完全に禁欲してます」

「偉いぞ~w」


 週末。日曜であるこの日は、午前のうちからマオがひっそりと愛斗の部屋を訪れている。期末テスト前の部活停止期間ゆえに姉の遙香が普通に自宅に居るものの、本日はマオの大丈夫な日なので逃すわけにはいかないのだ――ナマでヤるチャンスを。


 まだお互い服を着ているが、隣室の遙香に気付かれないように注意しながら、ベッドの上で軽くいちゃつき始めている。


「そういえば……沙希さんがもうじき姉ちゃんのもとを訪ねてくるんでしたっけ?」

「うん、遙香が万が一にもこっちの部屋に来ないように陽動してもらう感じw」


 用意周到のようだ。


「だから気兼ねなくシようね、いっぱい出していいから♡」

「だ、出していいんですよね? 本当に……」

「いーよ♡ 遙香が隣室に居る状況にハラハラしながら、赤ちゃんのお部屋を満室にしちゃってね?♡」


 そんな言葉にグッと来る。

 校内の男子人気が高い美少女の1人――金髪碧眼ハーフギャルのマオを自分の遺伝子で満たせるというのは、とんでもない名誉に違いなかった。


 心音が速まる中で、マオに抱きつかれ、キスもされる。

 愛斗もそれに応じた一方で、菱川家にはインターホンの音が木霊し始めていた。



   ~side:沙希~



「いらっしゃい沙希! さあ入ってよ!」

「おはよう遙香、じゃあお邪魔するわね」


 そんなこんなで、沙希のお出ましである。

 マオに貸しをひとつ作る形で陽動にやってきた沙希は、遙香との勉強会を行うことで遙香の気を逸らし続ける役割を託されている。


「じゃあなんか飲み物持ってくから、沙希はあたしの部屋に先に行っといて」


 そんな言葉に頷いて、沙希は2階への階段を1人で登っていく。


(もう始めているのかしら……)


 2階に上がってすぐの部屋が愛斗の私室である。通りかかったその部屋のドアにこっそりと耳を押し当ててみると――


「(ま、マオさん……沙希さんが来たっぽいので、そろそろ……)」

「(うんw じゃあ何も着けずにおいで♡)」

「(い、行きます……)」


 そんなやり取りのあと、お互いの気持ち良さそうな吐息が小さく漏れ伝わってきたので、沙希はなんだか気恥ずかしい気分に陥ってしまう。


(……友達と友達の弟が子作りを始めてしまったわ……まぁ大丈夫な日なんだから、あくまで疑似子作りなんでしょうけれどね……)


「(んっ♡ 何も着けないの……やばいね……w)」

「(……や、ヤバいです……僕、もう……)」

「(いーよ♡ そのまま奥に出しちゃえw)」


 そんなやり取りが引き続き聞こえてきて、なんだか沙希も下腹部がムズムズしてきた一方で、


「……何してんの?」

「――っ」


 遙香がジュースを持って階段を登ってきたところだった。

 沙希はドキッとしつつも取り繕う。


「あ、えっと……な、なんでもないわ……愛斗くん居るのかなぁ、って気になっただけであってね……」

「まぁ居るけどさ……あんなクソ童貞野郎のことなんか気にしなくていいって。ほら行こ行こ」


 そう言って遙香が沙希を追い抜いていく。


(……クソ童貞野郎どころか、女体を貪りに貪っているのだけどね……)


 何も知らない遙香をよそに、沙希はひとまず彼女の後ろに続いたのである。

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