第16話 チンアナゴとナマコ
「――来たねー!! 水・族・館!!」
「私、水族館に来るの結構久々だわ」
というわけで、日曜日を迎えている。
この日は昨日予定を組んだ通り、マオ、沙希と一緒に少し遠出して海沿いの大きな水族館を訪れていた。
愛斗は2人に挟まれる形で手を繋がれ、早速入館している状態だ。
「な、なんで僕は手を繋がれているんでしょうか……?」
「え、はぐれたら大変じゃん」
「ね、人がいっぱいだもの」
確かに日曜日だけあって人がいっぱいだが、かといって子供じみた扱いを受けるのはちょっと釈然としない。でも金髪ハーフギャルと黒髪美少女から寵愛を受けるのはイヤではないので、愛斗はその状況を甘んじて受け入れていた。
「――あっ、チンアナゴ!」
「ふふ、砂から顔を出しているのが可愛いわね」
やがて3人はチンアナゴの水槽に差し掛かった。チンアナゴはなぜかやたらと女子人気の高いイメージがある。例に漏れず、マオと沙希も食い入るようにチンアナゴの群れに釘付けであった。
「ねえねえ沙希ちん、あのチンアナゴおっきくない?」
「確かにおっきいわね。巨チンアナゴだわ」
「ちょw 沙希ちんw 下ネタやんw」
「wwwwwww」
2人が楽しそうに笑い合っていた。
愛斗は2人の真ん中でどういう顔をすればいいのか迷ってしまう。
「あ、沙希ちんw 巨チンアナゴと言えば、マーくんがそれなんだよw」
「え、何よ? マオったら愛斗くんのチンアナゴを見たことがあるの?」
「うんw 先日あたしマーくんのお見舞い行ったじゃん? そんときにさ、マーくんに汗掻かせるために雪山遭難式体温アゲアゲ行為をやったわけよw」
「む、ズルいわね」
「でさ、そんときにマーくんのチンアナゴを見たんだけど……もうね、ヤバいw 物心ついてからはリアルでマーくんのしか見たことないから比較対象がないんだけど、それでもおっきいって分かるくらいおっきいよw 可愛い顔してエグいの持ってんだよマーくんってばw ね?w」
ね?w と言われても反応に困る愛斗であった。ますますどういう顔をすればいいのか分からなくなってしまう。
「それでマオは……触ってみたのかしら?」
「うんw」
「ど、どうだったのよ」
「なんかねー、カチカチなんだけど弾力がある感じw」
「も、もうその話はやめましょうよマオさん」
聞いてて恥ずかしくなってきたので愛斗は止めに入った。
「だねw」
と頷いてくれたので、愛斗たちはチンアナゴの水槽から離れ始めた。
「――あ、ナマコに触れるコーナーあるじゃんw」
やがて3人は触れ合いコーナーに出くわした。
磯の生物と触れ合える恒常イベントのようだ。
ナマコに食い付いたマオが、早速手に持ってニギニギし始めている。
「よ、よく触れますね……」
愛斗は磯の生物が苦手なので、ちょっと遠巻きに見守っている。沙希も苦手であるらしく、「まったくよね……」と一緒に離れていた。
「えー、可愛いじゃんナマコ。――あw」
そのときだった。マオが持っているナマコがしらたきのような白い糸をびゅーっ、と発射し始めていた。愛斗と沙希が「ひぃっ」とビビる中、マオはゲラゲラと笑っている。
「おもろw ナマコって身に危険を感じるとこうなるんだよねw ――あ、そういえばさw」
ナマコをニギニギしたまま、マオがニヤリと笑いかけてくる。
「マーくんも、こないだこうやって白いのびゅーって出してたよねw」
雪山遭難式体温アゲアゲ行為をやった際に、実のところ愛斗は暴発している。
それをイジられてタジタジになりつつも、水族館での1日は一応かろうじて穏やかに過ぎ去っていったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます