第11話 また初めてをもらう

「……あれ? 今日は沙希さん1人ですか?」

「そうなのよ。マオは今日風邪でお休みだったから」

「あー……道理で学校で見かけないなと」


 翌日の放課後は、今のやり取り通りに沙希が1人で菱川家を訪れた。

 早速部屋に招いて、漫画を読み始めた沙希のおっぱいを揉ませてもらう。それはもちろんお駄賃の先払いである。


 当たり前のように揉ませてもらっているが、どう考えてもおかしい状況と言える。

 普段は真面目を演じて抑制されているがゆえに、沙希はこうして愛斗で性を発散しているらしいものの、たかだか友達の弟におっぱいを揉ませるというのは、普通に考えてあり得ないことだろう。発散先なら他に幾らでもありそうなものだ。


「あの、沙希さんは……僕相手にこんなことしてて良いんですか?」

「もちろんよ。むしろ愛斗くんじゃないとダメ」

「なぜ……?」

「さあ? なぜかしらね」


 ふふ、とはぐらかすように笑いながら、沙希が漫画を脇に置いて愛斗の頭を撫でてくる。


「ねえ愛斗くん、ちなみにマオとはどこまでシているの?」

「……え」

「ひょっとしてもう、ヤることヤっちゃってる?」

「い、いやヤってないですそれはさすがに……」

「なるほど。じゃあどこまでシているの?」

「えっと……それこそおっぱいを揉ませてもらったのが、一番大胆な行為かなと」

「ふんふん。じゃあたとえば、キスはしてないのね?」

「あ……えっと……」

「してるの?」

「……は、はい」

「ふぅん」


 沙希がその目をジトッとしたモノに切り替えた。


「進むところまでは進んでいるわけね。このオマセさんめ」

「で、でもマオさんから一方的に1回だけですよ……?」

「なら私からも一方的にキスをしてもいいかしら?」

「え」


 と反応した直後――沙希が顔を寄せてきて。

 

 ――ちゅ。

 

 と、気付いたときには唇を奪われていた。


(……っ!?)


 まさかの事態。

 まさかの状況。

 愛斗は驚くと共に抱き締められ、逃れることが出来ない。

 もちろんそのあいだもキスが続いた。

 上半身裸の先輩黒髪美少女とのキスは、もちろん愛斗の気分を掻き立ててくれる。混乱する中でも本能のままにおっぱいに改めて指を這わせ、Gカップのたわわなお肉を堪能する。


「ちゅっ……んちゅ……ん……」


 沙希が気持ち良さそうに吐息を漏らす中、やがて――


「ぷは……。ふふ……どうだった? 私のファーストキスのお味は」


 と、顔を離されつつそんな風に問われたので、愛斗はびっくりしてしまう。

 

「は、初めてだったんですか……?」

「ええそうよ。愛斗くんにならあげても後悔しないもの。可愛いから」

「か、可愛くないですよ……」

「それよりどうだった? 私のファーストキスは」

「い、良いキスだったかと……」

「マオより良かった?」

「ゆ、優劣は付けられないです……」

「ふぅん……ま、別にそれで良いわ。ふふ」


 特に気分を害した様子もなく、沙希がぎゅっと抱き締めてくれる。顔がちょうどおっぱいに包まれる感じになって、愛斗は照れ臭くも安らぎを抱く。


「ふふ、よちよち」


 もはや赤子のような扱いだが、愛斗はそれがイヤではなかった。

 ゆえにその後もしばらくのあいだ、沙希の母性に身を委ね続けたのである。

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