第3話 学校では
「――うわ、キッショいのおるやん」
あくる日の昼休み。
学食で1人気ままに定食を食べていた
「1人ランチとかヤバ。寂し過ぎて生きてる価値なくない?」
そう言ってテーブルの正面に回り込んできたのは、栗色に染めた髪をサイドテールにまとめている美少女だった。
愛斗はそんな彼女を一瞥してからひと言、
「そうやって口汚くて性格悪いから彼氏出来ないんだよ」
「う、うっさいし童貞のくせに生意気なんだけどっ!!」
図星を突かれたように反論してきた彼女が誰かと言えば、何を隠そう姉の遙香である。
姉は愛斗のことを毛嫌いしている。
愛斗も姉のことが好きではない。
なので顔を合わせるたびに悪態合戦が始まってしまうのだ。
「落ち着きなよ遙香。自分から喧嘩売っといて逆ギレはかっこ悪いw」
そんな中、口を挟んできたのは金髪碧眼のハーフギャルであった。
無論、マオである。
姉の友達として、学校ではいつも大体姉の傍に居るのだ。
「ぎゃ、逆ギレじゃないし。大体、こんな奴の肩持たなくていいって。こいつ頭が良いことくらいしか取り柄のないガリ勉で、しかもオタクなんだからさ」
「今どきオタク非難はないっしょ。それに頭の良さって高校生としちゃ一番重要じゃない?w」
「うぐ……そ、それはそうだけどさ……で、でもマオはこんなクソ童貞に極力近付いたらダメだからね! 惚れられたら面倒だし! ほら行こ行こ!」
そう言って姉がマオの手を引っ張ってこのテーブルから離れていく。
姉はマオを過保護にしている。そこに愛斗嫌いが合わさることで、愛斗とマオがなるべく接近しないように行く手を阻むガードマン的な役目を果たしているのだ。
だから、表立って愛斗とマオが絡むことはない。
それでも――
「(またね)」
姉に引っ張られているマオが、ニッと笑いながら誰にも気付かれないくらいの口パクでそう言ってきた。
それを読み取った愛斗は、嬉しい気分になった。姉はもとより、周囲をも出し抜いている感覚がたまらない。もちろん愛斗がそう思っているだけで、マオは姉や周囲を出し抜いているつもりはないのだろうが。
だとしても、そうした交流があるだけでありがたい。
そう思いながら愛斗は改めて定食を食べる。
心なしか、先ほどまでよりも美味しく感じられた。
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