EP6 真夜中の激戦

窓から差し込む青白い光が室内を照らし、ベットに死んだように眠っている少女の顔を優しく照らしだす。


川辺に落ちていた子供を拾ってからはや数日、いまだに目が覚めない子供の体を綺麗にして上げるべくマーサさんが子供の服を脱がせている。


「それにしても酷くぼろぼろの服ね」


そう呟きながら起用に子供の服を脱がせて木桶に入れてきたお湯で濡らした布で子供の体を丁寧に拭いていく。


「酷いは。こんなの小さな女の子にすることじゃないわ」


震える声を零したマーサさんは瞳に涙を浮かべて泣いている。


「やーね。年寄りになると何かと涙もろくなって」


ひきつった笑みを無理やり浮かべなが少女の体を拭いていく。


切り傷や打撲痕やそれらを覆い隠すように広がる火傷や何かの薬品で溶けたように肌が変色していたり、その上からさらに広がる根性焼きの焼け痕などがが全身に散りばめられている。


特に背中が酷く、何かしらの刃物で切り裂かれた痕が右肩から左腰付近までその小さな背中を横断している。


また治療に当たってくれたレゲン先生の話しによればこの少女の腹部下には皮膚の下にある「大事な器官」を抉り取られているらしく、その証拠に少女の腹部下には二つの大きな縫合痕が走っている。


少女の体にはもはや正常な状態の箇所を見つけることの方が難しいほど痛いしい傷で埋め尽くされている。


「変わりますよ」


半泣きのマーサさんに代わり、少女の体を丁寧に拭って最後に少女の顔を丁寧に拭いて上げる。


それにしても妹に似ているな。

ふとそう思ってしまい、呆れたため息を零す。


たしかに顔の形は何となく死んだ妹の面影が残っているが妹はきれいなイエローゴールド色だったのに対して目の前の眠っている少女の髪色は私と同じ黒髪だ。


余計な考えを振り払うように、右目を覆い隠すように巻かれた包帯を濡らさないように気を付けなが丁寧に少女の顔を拭いていく。


流石に髪を洗うことはできないので諦めて、乾いたバスタオルで少女の体に残っている水分を綺麗にふき取ってマーサさんが持って来てくれた清潔な洋服を着せてあげる。


「よっし。綺麗になったぞ」


そう少女に言い聞かせ、再びベッドへその小さな体を運びこみ静かに寝かしつけ電気を消してマーサさんとともに部屋を後にする。


「これからどうします?あの子」


「そうですねーーーーー・・・・・・・・・・」


涙で濡れた瞳をハンカチで優しく拭いながマーサさんは暖炉の前に置かれた安楽椅子にその身を預ける。


「まず、あの子の母親を探しましょう。きっと探しているはずです」


そう言うとマーサさんは安楽椅子を揺らし名がら酷く硬い声で答える


「必ずしも。あの子を親に引き合わせることが最善というわけではありませんよ」


「何を言っているんですか?」


一瞬、マーサさんが何を言っているのか理解できなかった。


私の中の親と言うものは子供にとって絶対に安心できる居場所であり、無条件に愛情を注いでくれる特別な存在であり、事実私もよくお母さんをよく妹と取り合っていた。


「あなたはいい親に恵まれたんですね」


その言葉を聞いて、何も言い返せなくなった。


その不満を表すように暖炉にくべた薪がパチパチと軽快な音を奏でながら燃えている。


「それじゃあ。一体どうしろと?」


何も言い返せず、八つ当たりのように思わず声に力がこもってしまった。


「そうですねーー。ひとまずは私が育てようと思いまs・・・・・・」


どこからか寝息が聞こえマーサさんが静かに眠りについた。


「マーサさん、そんなことろで寝ると風邪、引きますよッ!」


思わず声が引きつり、腰のホルスターに下げいるスチームルガーに手をかけ警戒する。


先ほどまでぼうぼうと燃えていた暖炉の火が消えている。


「ガス兵器か!」


そう吐き捨て、ポケットからハンカチを取り出し口元と鼻を覆い隠す。


刹那、室内の灯りが全て消え一瞬であたりが暗黒に飲み込まれる。


感覚だけを頼りに音を立てないようにすり足でキッチンに続くドアの裏側へ身を潜め息を殺す。


時間の間隔が薄くなるほど暗闇の中で耐えているとドアの裏、キッチンの方から何かがかみ合う小さな音が異常な静寂に包まれた室内に響き渡り、次いで布が擦れるおとが聞こえてくる。



ドアノブが独りでに動き、ドアが静かに開かれ真っ白い灯りが差し込みそのドアから武装した兵士が5人、音もなく侵入してくる。


〔殺るしかないか〕


静かにドアを閉め最後尾の兵士に狙いを定めて背後から膝裏を蹴り飛ばし、体勢を崩し首に左腕を回し兵士の首を絞め右手のスチームルガーで別の兵士に狙いを定める。


異変にきずいた敵兵士たちが一斉に振り返るがもう遅い。


スチームルガーの引き金を引き絞り発砲する。


マズルフラッシュが暗黒を切り裂き恐怖に歪んだ敵兵士の顔を照らしだし、打ち出されたホローポイント弾が定めた照準通りに敵兵士の眉間を正確に撃ち抜き顔面をぐちゃぐちゃに引き裂く。


即死だった。鮮血が部屋中に飛散し重力へ抗うすべを失った死体は呆気なく崩れ、地面に叩きつけられる。


銃口が向けられるが左腕で首をホールドしている敵兵を射線に被らせ引き金を引かせない。


「武器を捨てろ!次は貴様らの誰かがああなるぞ!」


そう吐き捨て別の敵兵へ銃口を向け牽制し不気味な空気が談話室を埋め尽くし、にらみ合いつずく。


暗かった窓の外から青白い月光が差し込み談話室を明るく照らし出し月光を受けたスチームルガーが冷たい光を反射させ鈍く輝く。


さきに動いたのは敵兵士だった。近場の机をこちらに蹴り飛ばしてくる。



咄嗟に人質を押し飛ばし、飛んできた机の下をくぐり抜けて押し飛ばした兵士の後頭部に狙いを定め、激発。


打ち出されたホローポイント弾が敵兵士の後頭部を抉り飛ばし、汚い脳液を辺りに四散させ絶命する。


素早く起き上がり眼前の敵兵の持っているアサルトライフルのバレルを掴み手前に引き寄せ、エルボーをお見舞いする。


「があぁぁぁぁあああ」


折れ曲った鼻を抑えながら怯んだ敵兵を射殺すべくたわわに実った胸に銃弾をお見舞いする。


「残り3人!」


そう呟いた刹那、窓ガラスが割れる音とともに談話室の窓から黒い影が外へととび出していく。


「逃がすか!」


月明りを頼りに今にも夜闇に紛れ込みそうな二つの人影を両手でしっかり構え逃後頭部に照準を定め呼吸を止め、引き金を引きし絞る。


雷鳴のような轟音が森の木々を揺らし、眠っていた動物たちを叩き起こす。


「あと二人!」


再び狙いを定めるシリンダー内の残弾を全て撃ち尽くす。

ボディープレートに当たったのか微かに物が砕ける音がして、次いで悲鳴が聞こえてくる。

どうやら当たったらしいが即死ではないらしい。


シリンダー内の空薬莢を全て捨ててムーンクリップを取り外し、再びホローポイント弾を装填する。


ホローポイント弾、それは対人戦や市街地戦に重点を置かれて開発された銃弾であり、対象に着弾点時に弾頭が押しつぶれ傷口を広げる殺傷能力が非常に高い反面、先ほどのように遠いとボディープレートを貫通できないことが多々ある癖の強い銃弾である。


「伏兵はいないか・・・・」


一応敵のスナイパーに警戒して物陰に隠れたがスナイパー特有の粘ついた視線を感じずスチームルガーがホルスターにしまいこみ少女が眠っている部屋へ足を運ぶ。


静かにドアを開き少女の無事を確認しドアを再び閉める。


「それにしても。やりすぎたな」


床には頭を吹っ飛ばされた死体が二つとひっくり返った机やまき散らされた鮮血で汚れた床や壁。


「はぁぁぁぁぁ」


この後の処理とマーサさんへの言い訳を考えると思わず大きめのため息が口から漏れ出す。

ひとまず後のことを考えてもしょうがないので、つらい現実から目を背けるべく殺した死体の所持品検査をする。


後頭部が吹き飛ばだれ脳が覗いている死体へ近づき、ズボンのポケットから戦闘服のポケット、果ては服の裏側まで綿密に検査する。


「流石に身元が確認できるものは持ってないか」


死体の足を引っ張り、裏庭に投げ出して二人目の死体の所持品検査をする。

戦闘時にも見えていたが豊かに実った胸は少しだけ羨ましかったが、容赦なく戦闘服をはがし襲撃の手がかりを探す。


これは・・・・旧式の暗号符丁。面倒な。


もう何年も使っていないし見てすらいなかった暗号符丁を青白い月光にかざし、睨、記憶の彼方に眠っている暗号コードを引っ張りだす。


「『標的:当該住居にいる少女。殺害ではなく生け捕り。その他の人間の処理はそちらに任せる。:5364252763245』か。最後の数列は・・・・発令元か?」


あらかた解読した暗号符丁をポーチにしまいこみ、女の死体の足を持って先ほどの死体と同様に裏庭へ放り投げる


「まったく。面倒な」


いまだ安楽椅子に背中を預け呑気に眠りこけているマーサさんを担ぎ上げ、彼女の寝室へ運び込む。


どこかで狼の遠吠えが聞こえ、心の中の不安を搔き立ててくる。


談話室にある窓を全てあけ放ち血生臭い空気を外の冷たい空気と入れ替えて、倒れた机を起こし、血を吸って重たくなったカーペットを裏庭に出し安楽椅子に腰掛けて休憩する。


久しぶりの戦闘で思いのほか疲労が溜まっていたいたのか、すぐさま睡魔に意識を引かれ瞼が閉じる。

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