結衣編

第1話 過去の私

私は幼少期の頃からよくいじめにあっていた


お母さん譲りの潰れた鼻、お父さん譲りのぷっくりとしたたらこ唇。幼稚園の頃は"いじめ"という感覚はなく、私をみて笑っている他の子達を私が笑わせているのだと得意げになっていた。


しかし、小学生になってからは違った。

周りは私が面白くて笑っているのではなく、私の顔があまりにもおかしくて笑っていたのだ。つまり、笑わせているのではなく、笑われていたのだ。


 その事に気づき始めたのは小学2年生の頃。

「結衣ちゃんの顔おかしいねぇー。」

「ほんとー。くちびるおっきくておもしろーい。」

その時は私自身の前で容姿をバカにされていた。でも、子供の成長は早く、私が居ないところでコソコソ話すようになった。そっちの方が余計に傷つくというのを知っていたかは別だが...


 その頃から私は学校に行くのが怖くなった。親に相談しようとも考えたが、いじめられているなんて証拠は無い。しかも容姿をバカにされているなんて相談すること自体恥ずかしかった。そのせいで毎日怯えながら学校に行くはめになった。


 学年が上がるにつれて、いじめはどんどんエスカレートしていった。初めは悪口だけだったのに、机に落書きされるようになったり、お気に入りの消しゴムを盗られたり、板書していたノートに落書きをされ、ゴミ箱に捨てられたりすることもあった。当時私の家はあまり裕福では無かったため、頻繁に新しいノートを買うことが出来ず、1冊のノートに2教科分板書するなんてことも多かった。


 そんなある日、私はとうとう耐えられなくなって1人廊下の隅で声を殺して泣いていた。そんな私に声をかけてくれた人がいた。

「きみ大丈夫?何があったの??」

声をかけてくれたのはその学校の図書室の司書さんだった。司書さんは泣いていた私の手を取り、図書室まで連れて行ってくれた。司書さん専用の小さな部屋に案内され、ドアの近くにあった椅子に座らせてくれた。

「ここは誰も来ないから思う存分泣いていいわよ。」

その一言で私の涙を溜めていた堤防が決壊した。とめどなく溢れでてくる涙。大声で泣く私の背中を司書さんはそっと撫で続けてくれた。


               つづく

 

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