第10話 彼女の涙
3日後、検査で異常がなかった僕は学校に復帰した。復帰したところで誰も話しかけてこなかった。所詮僕は2週間程度休んだところで誰にも気にかけて貰えない人間なのだ。登校直後、担任に呼ばれ色々と聞かれた。心臓病ということは伝え、体育は見学するということにした。余命の事を先生に伝えると気を使われると思い、それは言わなかった。いつも通り匂いの臭い担任は
「無理はするなよ。」
と言ってくれた。
放課後になり、次々と生徒が教室から出ていく。部活に行く者や、友達と談笑しながら帰る者。僕も荷物を持ち、ゆっくりと教室を出た。いつもより長く感じる廊下。結衣は居るだろうか。もし居たとしてなんと声をかけようか。お見舞いに来てくれていたようなのでお礼はしたい。
意を決し、図書室に入ると、いつもの席に結衣は座っていた。窓の外をぼんやりと眺める彼女はどこか寂しそうだった。
「や、やぁ」
バレないように歩き、声をかけた。こちらを振り向いた彼女は驚くと同時に、目に涙を浮かべた。まさか泣くとは思っていなかったのであたふたする僕。そんな僕には、ただひたすら、彼女の頬を伝う涙を見ていることしか出来なかった。
つづく
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