第9話 余命と選択
余命?3ヶ月?何を言っているんだ?余命3ヶ月?3ヶ月後には死ぬのか?
「どういう事ですか。」
父が声を絞り出す。
「千鶴くんはすごく珍しい心臓病なんです。世界で100億人に1人なるかならないかくらいの病気なんです。」
「手術とかできないんですか?お金ならいくらでも払います。」
「残念ですが......治療法がまだ見つかっていません。余命3ヶ月とは言いましたが、実際には3ヶ月以上生きられるかもしれません。本来ならお父様だけに伝えるべきなのでしょうが、時間が短いため、本人にも一緒にお伝えしました。」
「少し、息子と2人にしていただけますか?」
「いきなりお伝えすることになり申し訳ありません。詳しいご説明は後日にします。」
失礼します。と言って小林先生は病室をあとにした。父も僕も言いたいことはあった。でも口を開くことができなかった。
翌日、小林先生はいくつかの書類を持って病室に来た。父も僕もショックで寝ておらずクマができていた。
「伊藤さんおはようございます。昨晩はおふたりでお話できましたか?」
「い、いえ......」
「そうですか......。今からご説明に入ろうかと思っておりますが、大丈夫でしょうか?」
「はい......」
「昨日もお伝えしましたが、千鶴くんは重い心臓病です。そしてとても珍しい病気で、治療法も見つかっていません。そして余命は3ヶ月です。」
「はい...」
「ここからが本題になります。今、我々は千鶴くんにできることはありません。なのでここからはおふたりで話し合って欲しいのですが、この後どうされますか?千鶴くんの容態によって変わりますが、学校に復帰する。ということも可能です。」
「.........わかりました。少し時間をください。」
「はい。では、失礼します。」
と言って小林先生は父に資料を渡し、病室から出ていった。病院が静寂につつまれた。
「父さん。ごめん。」
「お前が謝ることじゃない。」
「これからのことなんだけど......僕学校に行きたい。」
それを聞いた父さんは驚いた顔をして
「本当に言っているのか?」
「うん。病院にいてもできることないんだし。退屈でしょ?」
確かに退屈だとも考えていた。何もせずただベットにいるなんて考えただけでも嫌になる。でも、一番の理由は結衣だ。早く結衣に会いに行きたい。そう思ったのだ。
「千鶴が決めたことなら俺は何も言わない。でも、無理はするなよ。」
そう言って父は小林先生を呼びに行った。
病室にやってきた小林先生は僕にたずねた。
「千鶴くん、学校に行くで良いんだね?」
「はい。」
「お父さんにはお話したけど、明日からすぐに復帰出来るわけではない。少し検査をしなくちゃいけない。それで異常がなかったら復帰できるよ。」
「わかりました。」
「では、今のうちに今後についてご説明します。先ほども言いましたが、まだいくつか検査をする必要があるので、検査が終わるまでは入院していただきます。その検査で異常が見られなければ退院して学校に言っても構いません。しかし、1ヶ月に一度は経過観察に来てください。あと、体育などでの激しい運動は控えてください。」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます