第8話 残りの時間

 目をあけると白い天井があった。多分ここは病院だろう。あまり物音が聞こえないから個室なのだろうか。窓から眩しい光が差し込んでいるから夜ではないことが分かった。少し頭が痛いが他に体に異常はなかった。

ドアのノック音が聞こえ足音が近づいてくる。白のカーテンが開けられた。

「起きた?」

そこには若い看護師の女性がいた。看護師さんは僕が起きていることを確認すると

「良かった。自分の名前はわかる?」

「......伊藤千鶴です。」

「何歳?」

「16です。」

「よし。ここまでは大丈夫みたいね。」

看護師さんはつづけて、

「どこか体に異常はない?」

「少し頭が痛いです。」

「分かった。少し待っててね。先生呼んでくるから。」

と言って看護師さんは医者を呼びに行った。するとすぐにやって来た医者は

「千鶴君おはよう。私は医者の小林です。気分はどう?」

「普通です。」

「どこか異常はないかい?例えば胸が痛いとか。」

「いえ、少し頭痛がするだけです。」

小林先生は少し難しい顔をしたがすぐに笑顔になり、

「良かった。お父さんに連絡するから少し待っててね。」

と言い先生は病室を出ていった。

「じゃあ、何かあったらそこのナースコールで呼んでね。」

そう言って看護師さんも病室を立ち去ろうとしていたので

「あの......誰が僕を病院に連れてきてくれたんですか?」

「同じ学校の...名前なんだったかしら...女の子で......たしかあの日一緒に帰ってたって言ってたわよ。」

「藤原さんですか?」

「そうそう。藤原結衣さん。あの子たまにお見舞いに来てるわよ。」

「そうなんですね。ありがとうございます。」

「じゃあ。また何かあったら遠慮なく呼んでね。」

と言い病院から出ていった。

 

しばらくすると父がきてくれた。

「千鶴大丈夫か?」

冬なのに汗だくなので駐車場から走ってきたのだろう。

「うん。大丈夫。心配かけてごめん。仕事はいいの?」

「部長に言って早退させてもらった。」

そこに小林先生がやってきた。

「伊藤さん。わざわざすいません。」

と一礼をした。

「いえいえ。こちらこそうちの息子が。で、千鶴はどんな感じなんですか?」

「その事なのですが......」

小林先生はとても苦い顔をして、

「よく聞いてください。千鶴君は心臓病です。そして彼の余命は長くてもあと3ヶ月です。」

                つづく

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