第6話 笑み
結局朝まで寝れなかった。
そんな僕に嫌気がさしながら学校へ行くと、いつもクラスで目立っている野村君が話しかけてきた。
「伊藤。今日掃除代わってくんない?放課後委員会があって...」
確か野村君は文化委員で、来月の文化祭についての話し合いでもあるのだろう。
「う、うん。いいよ。」
「悪い。本当にありがとう。委員会早く終わったらすぐかえってくるから。」
「分かった。委員会頑張って」
「ほんとありがとうな。」
野村君はそう言ってよく居る男子のグループの和に入っていった。会話は聞こえなかったが野村君がなにかを言った途端笑いが生まれていた。さすが野村君だなぁと思う一方で一つ疑問が浮かんだ。今日は高三生がテストで委員会は出来ないはずなのだ。あまり考えたくはないが、多分面倒事を押し付けたのだろう。考えても仕方ないので放課後掃除をするということだけ覚えた。
放課後、野村君の掃除場所に向かった。本来なら野村君以外の掃除の班の人が居るはずだったのだが誰も居なかった。完全にはめられた。本来なら4人でするはずの掃除を1人でしたため思いのほか時間がかかってしまった。急いで図書室に行くと既に彼女は着いていた。向かいに座った時、一瞬顔に笑みが浮かんだかと思ったが、すぐに不機嫌そうな顔になり、
「おっっそっ。なにしてたの?」
ちょっとキレ気味に話しかけられた。僕は正直に掃除をしていたことを話した。もちろん押し付けられた事はふせて...
「で?誰に押し付けられたの?」
顔に出ていたのだろうか、なぜか押し付けられたことがバレてしまった。
「えっと...な、なんで分かったの?」
やれやれとでも言いたそうな顔で
「そりゃ分かるでしょ。掃除にしては遅すぎ。嘘をついてるようには見えなかったから1人でやったんでしょ?」
「う、うん...」
正直に全てを話すと足に軽く蹴りをいれられた。
「委員会無いって分かってたんだったらなんでその時に言わないのよ!」
最後にもしかしてバカなの?と付け足された。自分でもなぜあの時に言わなかったのか分からない
「なんでだろう...」
つい口に出してしまった。その瞬間結衣は小さく笑った。
「あんたってほんとにバカなのね。」
彼女が笑ったところを初めて見た。嬉しくて僕も笑顔になった。彼女は数分間笑い続け、その後いつものように机に突っ伏して眠った。
つづく
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