第3話 理由
今日も放課後に図書室にいると案の定彼女がやってきた。僕が毎日来ることに呆れたのか僕に気づいても何も言わず、いつものように机に突っ伏した。向かいの席で静かに本を読んでいるとふいに肩をたたかれた。そこには同じクラスの田...田......田なんとか君がいた。田なんとか君は小さな声で
「最近ずっと図書室来てるじゃん。もしかして前の子狙ってんの?」
と調子良さげに聞いてきた。
「狙ってるとかじゃないよ。ここ暖房が当たって暖かいから」
「へーー。まっがんばれよっ」
と僕の肩を軽くたたき図書室から出ていった。名前なんだっけ...。
彼女は今日も今日とて下校の放送がなってから起きた。いつもならすぐに図書室を出ていくはずなのに今日は何故か座ったままでいた。僕は恐る恐る
「あのー...下校の放送なったよ?」
と聞くと
「知ってる。」
と食い気味に答え、僕を見つめてきた。なにか言いたそうだったので
「えっと......なにか?」
と聞いてみた。どうせ「キモっ。」とか「変質者。」だとか言うと思っていたら
「あんたなんで毎日ここにいんの?」
予想外の質問で言い淀んでしまい
「そ、それは......。」
「ごにょごにょ言わずにはっきり言いなさいよ。なんでいつも私の前の席に座るの??」
特に理由なんてないため、なんて返事をすればいいか分からず、考え込んでいると
「早く帰りなさーい。」
図書室に先生が入ってきて下校を促された。
「どうせ明日も来るんでしょ?ちゃんと考えて来なさいよ。」
と言って彼女は帰って行った。
その日は学校から帰ってからもずっと理由を考えていた。理由なんてものは無い。ただ彼女が気になるのだ。ふと気づいた時、僕は自分の部屋ではなく学校の図書室にいた。目の前には彼女が居て
「千鶴っ!ねぇ千鶴っ!」
と泣き叫んでいた。起きて返事をしようとしたところで目が覚めた。時刻は午前4時。まだ眠たい目をこすり、学校へ行くまでの時間、彼女に聞かれたことについてずっと考えていた。
つづく
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