メガネをかけ、後輩を見る

チュン チュン

 

「朝か。」

 

あれから考えてみたが何にも答えを出すことは出来なかった。

 

『お兄ちゃん!朝ごはん出来たよー!』

 

「あぁ、今行く!」

 

そう返事をして、一階の居間まで向かった。

 

ガチャ ギィ

 

「あっ!お兄ちゃん!おはよう!」

 

「おはよう。今日も元気だな。」

 

「うん!毎日が楽しいからね!」

 

「それはよかった。それじゃ、食べようか。」

 

「分かった!」

 

席に座った。

 

「「いただきます」」

 

うん、今日も美味しい。この元気な妹を見てると、昨日のあの姿が嘘のようだな。・・・・うっ、思い出したら少し気持ち悪くなったな。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「今日は俺が皿洗いしようか?」

 

「えっ!ううん!大丈夫!」

 

「そうか?いつもやってもらって悪いから、たまには手伝おうと思ったんだけど・・・・。」

 

「大丈夫だよ!」

 

なんか、必死な様子なんだけど気のせいかな?

 

「そうか?なら良いんだけど。」

 

「それより、お兄ちゃん!ほら、学校の準備しないと!遅れちゃうよ。」

 

妹からの催促を受け、居間から出て洗面所まで行った。

 

「お兄ちゃんが洗ったら私の朝の補給が出来なくなっちゃうじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ家出るか。」

 

そう言い、カバンを背負い、家を出た。

 

ガチャ  バタン

 

太陽がいつものように眩しいくらいに光っていた。

 

歩き出して家の敷地を出てすぐに声をかけられた

 

「センパーイ!おっはようございまーす!」

 

「あぁ、おはよう。朝から元気だね。」

 

声をかけてきたのは、後輩の狛星きらら。勉強はあまり出来ないが愛嬌があり、喧嘩が強い。

 

「ええ!そりゃあ、そうですよ!なんたって、天気が良いですし!それに先輩にも会えましたし。」

 

「?最後なんか言ったか?」

 

「なんも言ってないですよ!それより、遅刻するのはいけないですし、速く行きましょうよ!」

 

そして、少し早歩きで歩き出した。

 

 

 

 

 

 

信号機に足止めをされた時、きららが俺のポッケを指さした。

 

「あれ?先輩?ポッケに何か入ってますよ。」

 

そう言われて、ポッケに手を入れて、入っていたものを取り出す。

 

「っ!これはメガネ。」

 

入れてきてはいなかったはずだが。間違って入れてきてしまったのか?

 

「メガネですか?先輩、眼が悪かったんでしたっけ?」

 

「いや、眼は悪くない。これは・・・・イメチェン用に買った伊達メガネだ。」

 

こう誤魔化しておくしかないよな。

 

「それじゃあ先輩、メガネかけてみて下さい!」

 

「まぁ、いいけど。」

 

流石に、あのようなことは起きないだろう。

 

きららに言われた通りにメガネをかけた。

 

すると、

 

「っ!」

 

目の前のきららが数メートルはあろうほど大きい狼になっていた。

 

名前は・・・・ティンダロスの王

 

その姿を見た瞬間全身の筋肉が硬直したような感覚に襲われた。そして、こちらを品定めするような視線に鳥肌がたった。

 

「・・・・イ・・・・ン・・・パーイ・・・・センパーイ!どうしたんですか?」

 

その声が聞こえた時に意識が覚醒した。

 

「い、いや、何でもない。」

 

「?大丈夫ですか?」

 

「特に問題はない。」

 

そう言いながらメガネを外し、ポッケにしまった。

 

「そういえば、俺今日日直だった。急がなくちゃいけないから、また学校で会おう。」

 

「そうでしたか。ではお気をつけて!」

 

「あぁ、分かった。」

 

そして信号機が青に変わり、学校に向かって走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか先輩おかしかったような?」

 

気のせいかな?もしかして、正体がバレたとか?

 

いいやありえない。私の術は人間にバレることはないだろう。

 

そう思いながら、先輩のシャツを出して嗅ぎ出した。

 

スンスン スンスン

 

「やっぱり、健二先輩は私のご主人様に相応しい。」

 

あぁ、そのためには邪魔なモノを全て消さなくては。

 

狂犬は獰猛な笑みを浮かべた。目には捕食者の眼光を浮かべ異色なオーラを漂いながら学校へ歩き出した。

 

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