第3話
これを恋と呼ぶのなら、恋ってなんて難しいのだろう。
私は秋風の事が好きだけど、女の子が好きというわけではない。
まあ、初恋が秋風なのだから、本当の所は自分にも分からないけど。
ともかく、私は秋風以外の女の子に興味はない。
興味はないというと語弊があるけど、一先ず置いておく。
私は女の子の裸を見ても別に興奮しないし、キスしたいとか、おっぱいを揉みたいとかの欲求もない。いや、おっぱいは揉みたいかな。……こほん。
けど、秋風は別だ。多分、私が秋風に向けている目は、男子達と同じだ。
秋風をそういう邪な目で見たくないという気持ちと、秋風の全てを知りたい、触れたい、という欲求がいつも鬩ぎ合っている。
体育の授業の前は当然、体操服に着替える。
秋風の中で親友にカテゴライズされている私は必然、秋風の側で着替える事になる。
つまり、秋風の生着替えを真横で見るわけだ。
カッターシャツを脱ぎ捨て、上はブラジャー下はスカートという、誘っているのか、という格好で、秋風は腕を組み私のおっぱいを凝視する。
一応言っておくと、私は既に体操服に着替えている。
一応の一応言っておくと、私はDカップだ。
「何食べたらこんなにおっきくなるんだ?」
真剣な表情で秋風は、自分のおっぱいと私のおっぱいを揉み比べる。
優しく包み込むような手つきに、私は声が漏れるのを必死に堪える。
こいつ、誘ってるのか! 押し倒すぞ!
などと、実行できる筈もない事を考えていると、秋風はぽん、と左の手の平に右手を打ちつける。
「そういえば、誰かに揉んでもらうと大きくなると聞いた事がある! 星乃、揉んでくれ!」
「……は?」
こいつ今なんて言った? 揉んでくれ? 何を? おっぱいを? ダメだろ! いや、いいのか? 本人が言っているんだからいいのか? 揉むぞ? 私は揉んじゃうぞ? いいんだな? 後で訴えたりしないでよ? 本当に揉むからな? 本当にいいんだな?
この間約0.1秒。私は恐る恐る両手を秋風のおっぱいに近づける。
キーンコーンカーンコーン。
「やば、予鈴だ。急がないと」
秋風は素早く着替えると、教室の出口へと向かう。
私の両手が揉んだのは、なんの感触もない空気だけだった。
「おーい、星乃、急がないと遅刻するぞ」
不自然な体勢で固まる私を見て首を傾げる秋風。
そうだな。秋風の言う通り、急がないと遅刻する。
けど、これだけは言わせてほしい。
くそが!
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