終章 青薔薇の城・上
街中が棘で覆われている中で、『銀の騎士』とジェームズとサレッサは棘の檻の中に閉じ込められていた。
棘はとてもお利口さんで、僕達が近付くと道を空けてくれた。
「魔女……魔女よ……!」
サレッサは僕達を指さして叫んだ。
「わたくしは吸血姫よ?」
微笑んだソフィーはサレッサの首を棘で締め上げさせた。
「ねえ、貴女。かつてわたくしの愛しいジャックを散々に虐げたそうね?」
「だっ……そ、……それは……っ!愛人の……子……だったから……!!!」
「あらやだ、弁明も贖罪も反省も後悔も要らないわ。貴女達はね、これから薔薇のための土塊になるの。わたくしの愛しいジャックにとって忌まわしいものから大好きなものの土壌になるのよ。素敵でしょう?」
「化け物!化け物!!!母さんに何をするんだ!」
ジェームズが何か喚いているけれど、そんな雑音より僕はソフィーの声に聞き入っていた。
「そう言えば……わたくし達のお祖父様は、かつて人間から何て呼ばれていたのかしら。……思い出したわ、『串刺し公』よ」
サレッサがジタバタともがいて逃げようとする。棘の所為で傷ついて、血まみれなのに。
僕はサレッサが『尖らせていない杭』に突き刺さっていくのを見て、やっと安心した。
「さ、次は貴方」
棘がジェームズを捕らえた。
「止めろ!助けてくれジャック!謝るから、な、この通りに謝るから!!!!!」
「まあ。口だけなのねえ、貴方は」
最後に残った『銀の騎士』は青ざめて震えている。
「どうして……加護が……!?」
「だってあれは……貴方達が魔女と思って処刑してきた『青薔薇の乙女』を守るために叔父様が与えたに過ぎない力なのよ?それをどうして貴方達の力だなんて思ったのかしら」
「だって、僕はいつだって正しくて、魔女や吸血鬼は不浄で焼き殺すべき存在だと!」
「貴方ねえ……魔女の方々が、そもそも焼いた程度で死ぬ存在だと思っている時点で愚かすぎるわ」
「黙れ邪悪の王め!魔女と手を組んでいくら人間を虐げようとも無駄だぞ、神は全てを見ていらっしゃる!」
「ああ、カルロッタ先生の仰ったとおりだわ……何も話が通じない」
呆れた様子のソフィーの側で、僕は彼に告げた。
己が正しいと信じているだけの存在といつか必ずわかり合える、なんて思う方が痛い目に合う。
だって世界共通の唯一の言葉って暴力だけじゃないか。
「その神はこの今に貴方を助けてくれるの?」
ようやく彼が絶句した瞬間に、ソフィーに頼んで静かにして貰った。
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