第六章 眠り姫に涙と接吻を・②
帰り道。ユニコーンの引く馬車の中で僕達は話した。今まで話したくても話せなかったことも全て話した。最初は僕とお母さんは向かい合って話していたけれど、気付けば抱き合って泣きながら話していた。
「ソフィーさん」
涙を拭いて、お母さんはソフィーの手を握った。
「どうかこの子をお願いします」
「わたくしの愛しい人です、必ずもっと幸せにしますわ」
僕もジャックさんを見つめて、言う。
「今度こそお母さんときちんと話し合って下さいね。黙っていることだけが優しさじゃないですから」
「ああ。俺から言えた義理では無いが……二度とこんなことが無いようにする」
ジャックさんはお母さんの手を握って、頷く。
「絶対に守って下さい、お母さんを愛しているのなら」
「勿論だ」
城にみんなが再び集まった。カルロッタ先生もクロードさんも来てくれた。
シャルルさんはあの子――キアラ嬢に付きっきりで介抱しているらしく、この場にはいないけれど意見は既に決まっているそうだ。
――『青薔薇の乙女』を救う場所を作る。
「『銀の騎士』共の裏切りの所為でジャクリーヌ嬢のみならずキアラ嬢まで処刑されようとしていた。一刻の猶予もあるまい」
お母さんを休ませてきたジャックさんが真っ先に切り出した。
「我々吸血鬼はある程度近付けば『青薔薇の乙女』の存在を感知できる。パンゲア大陸に拠点を作るべきだろう」
俺がやる、と言い出そうとしたジャックさんを僕は遮った。ソフィーも頷いてくれている。
「ソフィーと僕にやらせてくれませんか」
「しかし」
ソフィーがたしなめるように遮る。
「わたくしの愛しいジャックにされたことをきっちりとお返しするまではわたくしも人間を許せなくてよ。それに叔父様はやっと手に入れたメアリー様を何においても優先すべきでしょう。奇跡に三度目は無くってよ?」
「……」ジャックさんは小さく笑った。「そうだったな。――任せて良いか?」
「勿論ですわ。それで、カルロッタ先生とアマデオにお願いがあるのですけれども」
「あら、ソフィー嬢なら帝国なんて片手間にあしらえるでしょうに」
カルロッタ先生とアマデオが首をかしげる。
「そうだぜ、お嬢様に恐ろしいものなんて無いだろう?」
「もう。愛しいわたくしのジャックと一緒に住む館が必要ですのよ。それにジャックは薔薇の花園やガラスの温室が大好きなのよ」
納得したように笑んで頷く二人は、口々に言った。
「どこに欲しいのかしら?」
「ようやく俺も植物魔法が上手くなりましたからね、期待していて下さいよ」
ソフィーは少し考えて、こう言った。
「そうね……あの街の跡地なんてどうかしら。ジャックを傷つけた何もかもをわたくし達の幸せで覆ってしまいたいのよ」
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