第四章 かつて絶望した一人の男・③
「もしかして『銀の騎士』の加護って……」
「ええ、全ての魔を退ける力ではないの。わたくし達は闇と魔の王よ、王に抗う魔の存在はあり得ない。『青薔薇の乙女』の幸せを守ることを誓わせて叔父様が与えたに過ぎないわ」
ソフィーは涙をこぼした。
「どうして『青薔薇の乙女』を誰よりも守るべき『銀の騎士』がジャックを焼き殺そうと……!」
「きっと数百年の間に、伝承が変わっていったんだろうね」
酷い話だと思った。
お母さんはきっと故郷に帰ったのだろう。
……でも拉致されたお母さんは必要とされなかったんだ。
だから……カイルに拾われてしまった。
「お母さんに会いたいな」
会って聞いてみたい。本当にジャックさんが怖かったのか。
多分、二人できちんと話したことも無かったんじゃないかな。ただただパニックだっただろうから……。
「ねえ、ソフィー」
ソフィーの肩に頭を乗せて甘えてみた。
「そう言えばどうして僕を見つけられたの?」
「『幸せの青い薔薇』は、血で汚れると悲鳴を上げるのよ。『青薔薇の乙女』を守るために。その声は伴侶となる吸血鬼のみが聞き取れるの。わたくしは使い魔をあるだけ全て放って、三日かけて牢獄の中で倒れているジャックを見つけたわ。でも見るからに命が危うくて……思わず『接吻』しそうになったのよ」
「『接吻』って凄いんだね」
「ええ、初めての『接吻』だけで……もし何かあっても、心臓が残っていればジャックを蘇らせることが出来るわ」
だからこそ最低でも同意の上で『接吻』はしなくちゃいけない。無理強いしても悲劇と破滅が待っているだけなのだ。
「そう言う力は要らないけれど、僕はソフィーにもっと『接吻』して欲しいよ。ソフィーの愛は何度でも感じたいから」
美しく艶やかに微笑んで、ソフィーは僕の額に何度も何度も『接吻』してくれた。
「許して頂戴ね、きっとジャックの血を吸ったらわたくしは貴女を永遠に閉じ込めてしまいそうよ。お兄様の時を聞いてどうかしていると呆れたけれど、わたくしも何も変わらなかったわ」
「手を繋いで薔薇の花園をお散歩してくれるなら構わないよ」
馬車が止まった。
窓から見れば、ドラゴンが飛び交う中、白亜の大きな城がそびえ立っている。
「到着しました」
クリストフォロさんが馬車の扉を開けてくれた。
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