第一章 僕が魔女になるまで・③

 教室中が大騒ぎになった。『銀の騎士』がこのクラスに所属することになったから。

「僕はオズワード・ミナーズ・ウィドワーズ。『銀の騎士』になるために、この王立ランドル・デュー学園で励みます。いずれは偉大な我が祖先のランドル・デュー・ウィドワーズのように……帝国と人々のために、この身を尽くし忠誠を捧げます」

ジェームズ達は少しでもお近づきになろうとしていたけれど、僕は怖くて不安でそれどころじゃなかった。

幸い、学園の使用人の人達から雑用で今日中に草刈りをするように言いつけられていたから、そっとクラスを抜け出して中庭にある花壇へ向かおうとする。

――その時だった。

「君、何て名前だ?」

悲鳴を上げそうになりながら考えた。

まさか僕に?いや、そんな訳がない。きっとジェームズ達に言ったんだ。

僕は慌てて教室を出た。理由のない恐怖がとにかく襲ってくるんだ。

「待て!」

追いかけてきて、もう逃げられないと悟った僕は怯えながら振り返った。

「ああ、良かった。名前は?」

何で『銀の騎士』が僕なんかに?

僕は、彼を追いかけてきたジェームズ達の形相が一変したから、もっと怖くなった。

もし父に言いつけられたら、また家に入れて貰えなくなる。

「ジャック……です」

「そう」と『銀の騎士』は満足そうに軽く頷いた。「君はどうして怯えているの?」

「ぼ、僕は人見知りで……」

「そうか」

穏やかに微笑んで、彼は言葉を続ける。

「君には家族はいる?」

ジェームズ達は憤った。

違う、違う、『銀の騎士』はそんなつもりじゃない。

「ソイツは出来損ないだから俺の家族なんかじゃねえよ!」

「バカだから何をしても良いんだよ!」

「うん、うん」と彼はにこやかな顔でそこまで聞いていたが、ジェームズの方を向いた。「『これ』は……本当に君の家族じゃないんだね?」

ジェームズは即答した。

「だから!俺の家族は父と母だけだ!コイツは何をしてもいいバカで、出来損ないなんだよ!」

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