ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~
第26話 悪役アビロス、いきる次男坊を圧倒する(そして色々めくってしまう)
第26話 悪役アビロス、いきる次男坊を圧倒する(そして色々めくってしまう)
入園試験午後の部、実技試験がはじまった。
実技試験は、模擬戦である。
数人と試合をして、その内容を試験官がチェックする。
試験はもちろん勝った方がいいだろうが、負けたからといって合格できないわけではない。
内容を採点しているのだ。
戦闘に特化していないくても、有益な人材はたくさんいるからな。
そして俺の相手は……
「ビャハハハ~~おまえが俺様の相手だと~~こりゃ一方的な試合になっちまうなぁあ!」
さきほどステラに絡んできた、ヒファロだ。
こいつかよ……
獲物は剣と、黒いボール? 鉄球に鎖がついたような武器。
ちなみに、模擬戦とはいえ普段使用している武器が使用可能だ。
闘技場は特殊な結界が張られており、実際にはダメージを受けない仕組みになっている。だから死ぬ心配はない。
「ビャハハハ~~死ねヤァアアア!」
試合開始の合図を待たずして、ヒファロが鉄球をいきなり投げつけてきた。
ハハッ、悪役アビロスみたいな奴だな。
まあ、たいした速度でもなく躱せるんだが―――
「漆黒の闇よ、その禍々しき黒で奪い取れ
―――
鉄球が俺の胸板に当たると。
ポンッ―――
まるでサッカーボールのように跳ねた。
「ビャハッ? な、な、なんだ!」
俺の【闇魔法】で、鉄球を軽くしたのである。
鉄球を足で蹴り上げて、2、3回リフティングした後にヒファロに蹴り返した。
と同時に
ヒファロの足元にドスンと鈍い音を立てて、石の闘技場にめり込む鉄球。
「―――ビャハッ~~! な、な、な、なあ~~」
わけがわからず狼狽えるヒファロ。
ヒファロからすれば、俺が鉄球をものともせずにはじき返したかのように見えただろう。
だがこんなもんじゃ終わらせない。
二度とステラに手を出せないように、わからせないとなぁ!
まだまだ悲鳴はあげてもらうぞ!
「「「「「―――キャアアアアア!」」」」」
―――え? なぜ外野から悲鳴?
観客席に視線を移すと、女子の叫び声が何重にも重なっていた。
みなさんの清らかな布が、ヒラヒラと舞い上がってらっしゃる。
―――忘れてたぁ……
スカートめくり祭りになってるじゃねぇか!
「ねえ、たしかアビロスって」
「そうよ、スカートめくりの最低アビロスじゃない?」
ざわつく観客席の端でステラが、「はぁ~」と顔に手を当てて項垂れている。
ぐっ……さすが悪役アビロス、速攻でみんなからヘイトを溜めたぜ。それに試験官がなんかメモってるじゃないか! ヤバイ間違いなく減点入ってんじゃねぇか!
しかし、やってしまったものはしょうがない!
―――ば、挽回するんだ!
「ビャハァ! おいクソアビロスぅ! 俺様の鉄球をいなした程度で調子に乗るなよぉおお!」
こいつは……俺の気も知らずに好き勝手言いやがって。
ヒファロが抜刀して、こちらに突進してきた。
俺も剣を抜くか?
いや―――ちょっと待て。
なんか遅くない?
なんだ? こいつ全力で走っているのか?
ようやく俺の前に来たヒファロが、剣を横なぎに振りぬこうとする。
いやいや、なんだそのモーションは。
俺はすこし後ろにステップをとり、なんなくその斬撃をかわす。
その後も、ヒファロは幾度となく攻撃を繰り返すが、どれもが遅すぎるし迫力にかける。
なんだこれは? 俺の感覚がおかしいのか?
対人戦ではラビア先生とララぐらいしか経験がない。あとは全部魔物だ。だから結構苦戦するかとも思っていたのだが。
「おい、ヒファロ! さっきからおちょくってるのか? 真面目にやれ!」
仮にも4大貴族の次男坊なら、それなりの訓練を受けるはず。
こいつも怠惰を貪った奴なのか?
「ビャハァ! なめるなよぉ~クソアビロスがぁ!」
またも大振りの攻撃か―――
俺は難なくその斬撃をかわしつつ、一気にヒファロの懐へ入る。
「ブヤヒャァッ―――」
ボディブローを叩きこまれたヒファロが、変なうめき声を上げてその場に崩れ落ちた。
おい、ちょっと待て。
弱すぎないか……
今のは結構軽めに打ったぞ。ララなら余裕で反撃してくるし、ラビア先生なら「なんだそのぬるい攻撃は!」とか言って逆にボコボコにされるぞ。
てことは、このヒファロ、たぶん受験生の中でも最弱なんだろう。
たんに4大貴族の権威を振りかざして、威張ってるだけの奴ってことか。
「ブヤヒャ! アビロス~~てめえは俺を怒らせたぞ~~俺様の最大魔法でくたばるがいいぜぇ~~」
お、魔法か。これはちょっと楽しみかも。
ゲームをプレイしていた頃は、同じ魔法だと違いはなかった。だが、この世界では同じ魔法でも、威力、持続性、影響範囲、連射、色、濃度等々が人によって違うのだ。ラビア先生なんか全ての魔法の威力が桁違いだったしな。
「火の精霊よ、その化身の軍勢をもって敵を焼き尽くせ!
――――――
おお、拡散系の魔法が使えるのか!
俺の好きな系統、実戦向きなんだよな。こんな1対1のような戦いはそこまで発生しない。むしろ多数と同時戦闘となるケースの方が多い。その場合に拡散系の魔法は一気に同時攻撃を繰り出せるので便利だ。
俺の相手は、どちらかと言うと魔物が多かったしな。あいつらは群れで襲ってくる方が多い。
―――っておい!
ヒファロの放った多数の炎弾が、結界を超えて観客席の方に飛んでいく。
「ブヤヒャ! あれ? どこいくんだよぉおお!」
あれ? じゃねぇええ!
クッ……こいつまだ制御できない魔法を使いやがったな!
「ええ! ウソでしょ、こっちに飛んでくる~~!」
「ヒファロのやつ、何考えてんだ!」
「巻き添えを食うぞ! おまえ邪魔だどけ!」
観客席は結界外、つまり直撃すれば相当な被害が出る。
受験生たちはそこまで戦闘経験もないやつらだ。動揺が動揺を呼び、パニックを引き起こしそうになっている。
「みなさん大丈夫です! 彼をアビロスを信じてあげてください!」
そんな状況下で、可憐だが力強い声が会場に響いた。
ステラだ。
聖女の声にパニックになりかけていた会場が平静を取り戻しはじめる。
俺の方を向いて、ニッコリ微笑むステラ。
そうだよな、ここまで言われて―――やれないわけがないよなぁ!
「漆黒の闇よ、その黒炎の軍勢をもって敵を焼き尽くせ!
――――――
黒い炎弾が、赤い炎弾を追撃して、次々に空を黒く染めていく。
完全に空が黒く染まると―――
「ヒファロ! おまえに全部かえすぜ! ―――受け取りな!」
黒い炎弾、その全てがヒファロめがけて降り注ぎ始めた。
「ビャハァ~~ひぃいいい、またあの黒い炎かよぉおおおぉぉ……ブギャラじゅぱぁあああぁぁ……」
ヒファロに全ての黒炎弾が着弾して、凄まじい爆発音と黒い爆煙がモクモクとあがる。
まあ、結界内だ。死ぬことはないだろう。
俺が闘技場から降りると、法衣を揺らして美少女が駆けつけてくる。
「アビロス~~やりましたね!」
「ステラ……大丈夫だったか?」
「もちろんです! だってアビロスがいるのですから! ずっと守ってくれるんでしょ?」
「お……おう」
そして周りは俺の黒い炎に驚いたのであろう。
ザワツキが収まらず、なにやらヤジが飛び始める。
スカートめくるわ、意味不明な魔法を使うわで相当に目立ってしまったからな。
結局、悪役アビロスは悪役のままか……
が、飛んでくるヤジは予想外のものだった。
「あ、アビロス助かったぜ!」
「アビロス君、ありがとう!」
「すげぇ、あのヒファロ相手に剣すら抜かなかったぞ」
「わたしさっき見てたよ! 聖女さまをヒファロから助けてたもん!」
―――あれ? こりゃ褒められてんのか?
ハハッ、前世でもあまり認めれたことはなかったからな。慣れないが心地いいもんだ。
「ほら、アビロス。自分を信じて頑張れば、あなたの悪評なんかすぐに消えます。あなたが変わったことは、私が一番よく知ってますから」
そう言ったステラの方を向くと、彼女はニッコリ天使の笑顔を見せてくれた。
相変わらず可愛すぎる。
にしてもビノリア家の次男坊なんてキャラが出てくるとは。原作には出ていなかったはず。しかも悪役アビロスポジション。
てことは俺が変わったことでストーリーが改変されて、新たなヘイトキャラ(悪役)を求めているってことか? つまりは、俺は破滅ルートから外れつつあるのか?
そうだとしたら、俺のやっていることは間違ってはいないということだ。
まあ、とにかくはこの入園試験を無事突破することだな……たしかあと1人と対戦だったか。
「あ、アビロス……あなたの次の対戦相手って」
ステラの目が大きく見開く。視線はおれの後ろへ。
「ハ~ハッハ! アビロス久しぶりだな! 君がわたしの対戦相手か!」
なんだか聞き覚えのある笑い方……おいおい俺の対戦相手って。
俺が振り向くと、予想通りの人物がそこにいた。
マリーナ・ロイ・リストリア
―――この王国の第三王女。そしてゲームブレパのメインヒロインの1人である。
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