ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~
第18話 聖女のお風呂はダンジョンボスも呼び寄せる
第18話 聖女のお風呂はダンジョンボスも呼び寄せる
オークチャンプを倒したことで出現した「お宝扉」。
扉を開けるとそれはお風呂だった。お湯の泉のようなかんじの。
「あ、アビロス! このお湯凄いですよ! いや~ん、お肌スベスベになちゃいます~~♡」
そしてテンション高めの上機嫌な声を上げているのは、聖女ステラだ。
オークダンジョンに潜って2日目。
ずっとお風呂に入りたいとは言ってたので、まあ良かったということにしておく。どのみちここらで野営しなきゃだったしな。
「アビロスもあとで入ってくださいね~~」
楽しそうだ……ここダンジョンだけどな。
ステラはアクティブというか、明るいというか、流石メインヒロインみたいな存在感がある。
聖女で貴族令嬢だが、そんなことに関係なく誰とでも楽しく会話するし、守られてばかりでもない。
そしてその優しさは、こんな悪役アビロスにでさえ……あれ? 俺は嫌われているんじゃないのか?
しかし、たまに切ない顔をする時があるんだよな。
なんというか、ちょっと無理しているような。
いや―――
過度に詮索するのはよそう。
どんなに可愛くても、どんなに天使でも、俺を破滅させるキャラだ。
「さて、ステラが風呂入っているうちにテントの設営でもするか」
俺は無理やり思考を切り替えるようにひとり呟いた。
周辺にはステラが【結界】をはってくれている。
便利だな。気にせず安息できるのはとても大きなメリットだ。本来なら見張りを交代で立てるなど余計な体力と時間を費やさないといけない。この世界には他にも防御系の魔法はあるが、ステラの【結界】にはとても敵わない。
俺が粛々と作業を進めていると、遠くからズンズンと地響きが近づいてきた。
「―――なんだ!?」
もの凄い勢いで接近してくる大きな黒い影。
「お、おいおい……あれは……」
「お、オンナのにおいぃいいい~~イイオンナのにおいぃいいいい! フゴォオオオ!!」
鼻息を荒々しく鳴らして、現れた巨大なオーク。
頭にはくすんだ王冠、そしてボロボロのマント。
―――マジかよ! ステラのやつ……オークキングを呼び寄せやがった!!
メインヒロインの力はんぱねぇ……
おっと、こうしちゃいられん!
「やったぞ! ステラ! オークキン……うぶっ!!」
なんか硬くていい匂いのするものが、俺の顔面に直撃した。
石鹸だ……
「ちょっとアビロス! いきなり入らないでください!」
うお、そう言えば風呂入ってたんだった……
「すまん。えと、ステラ」
「わかってます! 服着るまで頑張ってください! アビロス!」
「ああ! 任せておけ!」
ガキッ! ガキッ!
「お、オンナ~~オンナ~~フゴォオオオ!」
力任せにステラの【結界】を殴りつけるオークキング。
ダンジョンに潜って2日でオークキングに遭遇できたのは幸運だ。
だが…… ガキッ! ガキッ!
―――【結界】にひびが入る。
そう、オークキングはハッキリ言って強敵だ。さきほどのオークチャンプとは比べ物にならない。俺とステラ、2人の力が必要だ。
とりあえず、ステラが来るまで時間稼ぎだな。
「お、オンナ~~オンナ~~膨らみのあるオンナ~~フゴォオオオ!」
「おい! オークキング! 奥にいる女の膨らみはとんでもないぞ!」
会話が成立するかはわからんが、とにかく気を引くぞ。
「フゴォオオ? それデカイか~~デカデカか~~」
「そうだ! はっきり言うがおまえの想像なんぞ上回るデカさだ!」
なんの会話だこれ。
が、内容に意味はない。ようは多少時間が稼げればそれでいい。
現に俺の言葉に気を取られて、オークキングの手は止まっている。
「お、オンナ~~ミルクでるか? でるか? フゴォオオ~」
「おお……も、もちろん出るぞ。それもたっぷりな!」
「フゴォオオオ! ミルクでる! ミルクでるぅううう!」
マズい。なんか会話がヤバイ内容になってきた。
「フゴォオオオオオ!! ミルクオンナ~~コドモたくさん作れる~~作るぅうう!!」
ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!
再び【結界】を殴り始めるオークキング。
やばいな……ちょっと興奮させすぎたか……【結界】を叩く力が倍になった気がする。
時間稼ぎとはいえ、ステラに聞かれてなくて良かったよ。すまん、心の中で謝罪する俺。
と思ったら、肩をグッと掴まれた。
「まあ、アビロスったら。随分と楽しい会話をしてるんですね。ミルクオンナって誰の事でしょうね、フフ」
着替えた純白の法衣を揺らしながら、ニコリと微笑み俺の肩にギュッと力を込める聖女さま。
やべぇ、着替えるのめっちゃ早いじゃない。
「あ、あなたもそんな目で見ているんですか! その……私の」
「い、いやいや。そんなわけないだろ。じ、時間稼ぎのためだよ」
「むぅ……なんか怪しい返答ですが。そういうことにしておきます。アビロス、お待たせしましたね」
「ああ、2人でこいつを倒すぞ」
俺とステラは互いに頷いて、オークキングに視線を向ける。
「――――――ッ【結界】が!」
光の壁がバラバラに四散した。
いくら聖女の【結界】が強力といっても、まだステラは成長途中だし経験もそこまで積んでいない。
ゲーム後半でのステラの【結界】ならばオークキングでも破壊できないだろう。だが、今はまだ原作が始まってすらいない。
「くぅうう、私の5年間の努力の結晶を! 許しません!」
ステラが聖杖をブンブン振り回して、戦闘態勢に入る。
やる気満々だな。
「よし! 俺は右から攻撃する! ステラは左を頼めるか!」
「誰に言ってるんですか! もちろんです!」
そう言うや否や、ステラは聖杖に聖魔力を思いっきり込めて、果敢に突っ込んでいく。
ハハッ、いいな。
ステラってこんな思いきりのいいキャラだったのか。
5年前もいきなり魔族に殴りかかっていたしな。
思慮が浅いとかそんなんじゃない。
彼女なりに考えて、即行動に移しているんだ。
負けてられねぇ―――
「さぁあああ! 俺も全開でいくぜぇええええ!」
こいつを倒して卒業試験をクリアしてやる!
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いつも読んで頂きありがとうございます。
ついにダンジョンボスと遭遇、さすが聖女風呂!
少しでも面白い! 少しでも続きが読みたい! と思って頂けましたら、
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