天国へ行きたかった男

Grisly

天国へ行きたかった男

S氏は、天国へ行きたかった。

毎日それだけを目標に生きていた。

人生は長くて100年でも、

天国へ行けば、永遠の安らぎ。

生きている時より、死んだ後の方が大事


全てを犠牲にして、天国入りを目指した

泥棒、強盗、

犯罪をしないことはもちろん、

ポイ捨てや、ピンポンダッシュ、

酒、タバコ、ギャンブルに至るまで、

全くしなかった。


トラブルに、

巻き込まれることも考えられる。

出来るだけ外出を避け、レジャー等、

余計なことには手を出さなかった。


砂浜のゴミ拾いなど、

ボランティアにも精を出した。



待ちに待った審判の日、

ついに、S氏は行くことが大変難しい、

天国へと行くことに成功したのだ。



S氏はワクワクしながら、

天国へ向かった。


まずはと、料理が出された。

最高級ステーキに、ワイン、

キャビア、フォアグラ。

S氏は一口も食べれなかった。

彼はビーガンだったのだ。


天国名物、巨大なウォータースライダー

これもS氏は楽しめなかった。

彼は泳げなかったのだ。


それならばと、遊園地を進められたが、

どのマシンもS氏は楽しめなかった。

彼は絶叫系は苦手なのだ。

もうすでに死んでいるとはいえ、

恐怖は消えるものじゃない。


ナイトクルージングにも挑戦してみた。

もちろん天国なので、絶世の美女つき。

これもS氏には向いていない。

彼は船酔いする体質だった。


他にも、

おおよそ地上の人間の羨むような

夢のような世界が、そこにあったが、

S氏は、全く楽しめない。



よくよく考えてみれば、

当たり前のことなのだ。

そもそも、素直にこの状況を満喫できる

欲深い人間は天国に来れるはずないのだ


そして、自分に合っていない、

天国を作り替えろなどと不満をたらす、

反体制的な人間も、

天国に来られるはずがない。


S氏はつぶやく。

こここそ地獄というのでは…
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天国へ行きたかった男 Grisly @grisly

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ