第2話 紫の行方

 俺は学校を抜け出して紫陽花屋敷へ向かった。

紫の事を考えるといてもたってもいられなかった。


 紫陽花屋敷──古い日本家屋で地元の人達が近寄らないくらい不気味で気味の悪い屋敷だ。

たまに、面白半分で行く奴もいるが誰一人帰って来ない。 

 屋敷で咲いてる紫陽花が、季節が変わってもずっと狂ったように咲き続けているからそう呼ばれるようになった。


 

 霊感があり周りから気味悪がれた俺を優しく接してくれた大切な幼馴染。

俺を「優也」と呼び笑顔を向けてくれる彼女。

高校生になった今でも変わらず一緒にいてくれる。紫頼むから無事でいてくれ──




 行く途中クラスの会話を思い出す。



 紫がいなくなった翌日、クラスはいつにもなく騒がしくその話が広まっていた。

俺は昨日、紫の母親から「紫が帰ってない」と電話が来てその時に知った。

噂は早いな…流したのは噂好きの女子達だろう。


「ねぇ、白崎さんまだ帰ってないんでしょ?」

「紫ちゃん、近道に紫陽花屋敷の前を通って帰るって言っていたからそれで…」


 噂好きの女子や紫の友達の女子が話していたのが聞こえた…「紫陽花屋敷」って今言わなかったか?


「水無くん、白崎さんの幼馴染なんでしょ?何か知らないの?」

「紫ちゃんとは一緒じゃなかったの?」


 女子達が聞いてきたが、俺はその日は日直だったし、紫は友達と先に帰ったと答えた。

そんなことより、気になる質問がある。


「それより、今"紫陽花屋敷"って言わなかったか?紫はそこにいったのか?」


 (誰も寄りつかない気味の悪い屋敷に…?) 


俺が聞くと紫の友達──早田はやたが絞り出すような声で言った。


「…紫ちゃん、その日は早く帰りたいって言っていたから紫陽花屋敷が近道だから通るって言ってたの。私は止めたんだけど、紫ちゃん聞かなくて…」


 今にも泣き出しそうな顔で言ってた。


「…そうか。紫は紫陽花屋敷に行ったかもしれないのか…」


 まだ、そうと決まったわけではないが紫は霊感がない分、無意識に霊を引き寄せる体質だから嫌な予感がする。


「ちょっと水無くん!!どこに行くの!?先生来るよ?」

「忘れ物したから取りに行く。そう伝えてくれ」


 クラスメイトの呼び止める声が聞こえたが、適当に言った。

 

 紫の居場所が分かったかもしれないんだ。


 俺は教室を飛び出し、走り出した。











 





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