天国開発推進会議

天国開発推進会議

天使達の間で会議が開かれた。

議題はそう、天国の開発である。

なんといっても、

ギリシャ時代から2000年以上、

何も変わらぬ環境なのだ。

雲の上にあり、

ハープを奏でる天使がいて

パルテノン神殿のようなものがあり、

噴水と、温泉のようなものがあるのみ。

こんな殺風景ではいけない。

天国とはモデルルーム。

皆が憧れて、目指すものであってこそ、

地上の秩序は保たれているのだ。

誰もが思い描く理想の姿として、

天国は存在するべきだ。

天使達は熱くなった。

特に、地上で研修を終えたばかりの、

若い天使達は、最新の物を知っている。

ウォータースライダーはどうだろう。

すぐ却下された。

いや、泳げない人は楽しめないし、

噴水なら天国にもあるじゃないか。

ジェットコースター

というものがあるらしい。

これも却下された。

絶叫マシンに乗れない人はどうするんだ

天国に騒音があったら落ち着けないぞ。

人口波サーフィンが最近の流行らしい。

これも却下。

バランス感覚のない人間が可哀想だ。

肉料理をもっと充実させ、

タンパク質中心の生活を。

これも却下。

今地上ではビーガンが流行っていて…

結局、何も決まらず、

会議はお開きになった。

分かりきったことだった。

この会議は毎年開催され、

毎年何も決まらないのだ。

大体、誰にとっても幸せな世界など、

存在するはずがない。

だからこそ、

天国は、ギリシャ時代の環境のまま。

いや、それすら果たして、

人々の希望を汲んでいるのか…