オカエリナサイ

青いひつじ

第1話

6月。

都内某マンションの一室で、女性の遺体が発見された。

死亡推定時刻は3日前の夜中0時ごろ。

第一発見者は、親友のAだった。

連絡の返信がないことに疑問をもったAが、合鍵を使って中に入ると、寝室で被害者が倒れていたという。




警察は、被害者の身元周辺を中心に事情聴取を行った。

親族、親友のA、同僚のBとC、元交際相手のD。

しかし、どの人物からも有益な情報を得ることはできなかった。




「どうして、あの子が、、、」



「結婚報告の連絡をしたんです。いつもならすぐに返信がくるのにって思って、、、。

どんな時も私の味方で居てくれる、心強い存在でした」



「几帳面な性格で社内の評判は勿論、クライアントからの信頼も厚かったんですよ。誰かが彼女を恨んでいるなんて、聞いたことないです」



「僕たちは、それぞれの夢を尊重して別れました。別れた後も、時々連絡を取り合っていて、お互いよき理解者として過ごしていました」




話を聞く限り、彼女は誠実で、周りの人間からの信頼も厚い人間だったようだ。

現在は交際相手もおらず、仕事漬けの毎日だったという。




「被害者、かなり優秀な人物だったようですね。

やはり、妬み恨みを持った人間の犯行でしょうか」



新米刑事が部屋を見渡し呟いた。



「取り調べでも手がかりになるような情報は何ひとつ得られなかった。

関係者全員、犯行時刻のアリバイもあった」



「そうですか、、、」





"オカエリナサイ、オカエリナサイ"



奥の部屋から、ガシャンガシャンと何かが暴れる音がした。




「インコですか?」



「あぁ、被害者が飼ってたインコ。

毎日帰ったら、ただいまと呟いていたらしい。

こいつが見たこと、全部喋れたらなぁ」



「被害者の女性って、一人暮らしでしたよね?」



「あぁ、そのはずだが」



「しかも、被害者が亡くなって6日経ちますよね」






その夜、暗い部屋でインコの鳴き声が響いていた。




"オカエリナサイ、オカエリナサイ"








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オカエリナサイ 青いひつじ @zue23

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