第3話

 どうすっかなあ~

 俺が鬼だったら、アイツらの気持ちわかるし。

 そんなことを、考えながら、隣でいまだにのびているキジを、あきれながら見ているさる。

 しかし、さるは、キジがどんだけ頑張ったのかを知らずにいるので無理もない。

 いい加減、起こしてやっか、と思ったとき、ぼんやりとキジが、めを開けた。

「おい、やっと起きたのかよ」

「え?さるさんではないですか」

「喜べる状況じゃねえぞ」

「?」

「見ろよ。檻に入れられたうえ、縛られてんだぜ」

「あなたが、鬼が島に来るという、噂を聞いて、先回りしようと思っていたのですが、すぐさま見つかってしまいました」

「鳥のくせに警戒心弱くね?」

「う…そんな風におっしゃらなくても」

「おまえは、俺のこと探しに来たわけ?」

「あなただけではなく、皆を集めないといけないと思っているのです」

「まあ、桃太郎が来なかった時点で、おかしいわけだし」

「いぬさんについて知りませんか?」

「知るわけねえだろ。あいつは、一匹じゃいられねえしな」

「ああ、あまり、あちこち動き回らないでいてほしいのですが」

「確かに。どっかで、おとなしく飼われているほうが、こっちも探しやすい」

「オイ サッキカラ ウルセエゾ」

「いい加減、出してくんねえかな?逃げやしねえし」

「オババタチヲ ドコヘヤッタ」

「?おばば?」

「アカオニノ フクツウヲ ナオシタ」

「俺が気が付いた時には、赤鬼がいたんだ」

「ソウ サルヲ タスケル ダカラ アカオニ ツレテイカレタ」

「え?俺は何も覚えてないんだよね」


 さるが気が付いた時には、すでに、赤鬼がいて、なにが起こったのかも、いまいちよく覚えていなかった。

 豊受大神とようけのおおかみが皆の記憶を消していった。

 ただ、鬼が島で、赤鬼が腹痛をおこした件は、他の鬼たちの記憶に残っていた。

 島では、いつまでたっても、赤鬼が帰ってこないので、騒ぎが起きていた。

 おばばたちを、引き裂いてやれ、という鬼もいた。

 しかし、いつのまにか、いなくなっていたおばばたち。

 この、おばばたちも、豊受大神が、鬼たちを惑わせるためにつくりあげた、幻であった。


 一方、キジは、さるが鬼が島に来るというなら、先に自分が島へ行って、待ち伏せしていればよい、と考えた。までは、よかったが、飛べるようになったとはいえ、そこは、海風。勝手が違う。よろめきつつ、無様な格好で、浜に着いたところを、鬼に捕らえられてしまった。

 鬼たちも、桃太郎が現れなかった噂は知っていて、こいつは、そのキジに違いないと踏んで、いきなり殺したりはしなかった。


 赤鬼は、心配していたような、裏切りもの扱いは受けずに、ひどい目にあったのではないかと、心配されていた。

 さるをはじめ、村の人達に、とても良くしてもらった話をして、鬼が島に帰る手はずを整えてくれたのも、さるだということを説明した。

「テッキリ ウラギリモノトシテ フクロダタキダト オモッタ」

「ナニイッテンダ オマエミタイナ スバラシク ヒドイコトヲ スルヤツガ オレタチヲ ウラギルワケガネエ」

「タイショウニ サルハ ワルクネエト イイタイ」

「ドウヤラ ソノヨウダ オレタチモ イオウ」


 大将に、さるの話をして、なんとか自由にしてもらった、さるとキジ。

「これから、桃太郎を探しに行くんだが、もし見つかっても、俺たちとオマエラの新しい関係を築けたら、という提案をするよ」

「わたくしも、暴力では何も解決しない、ということを説いて聞かせるつもり」


 こうして、一匹と一羽は旅立っていった。

               

                      つづく・・・かどうかはわからない





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホームシック あしはらあだこ @ashiharaadako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ