第2話

 キジはまたもや夢を見ていた。

 うわあ。この、何とも言えない、あたたかい気持ち。

(さあ、いつまでもこんなところにいるわけには、いきませんよ)

 女神様?

(そこから出してあげましょう)

 え?本当?

(あなたの役目を果たしなさい)

 わたくしの役目?


 そこで、キジは目が覚めた。

 いつの間にか、庭に出ている。

 あぁ、わたくしは、どうすればよいのでしょう。

(海に向かいなさい)

 う、海?

 わたくしは、海風には乗ったことがない・・・

 でも、女神さまがついている。

 大丈夫よ。わたくしならできるわ。


 と思って海には来たが、海鳥たちの視線の怖いこと。

 そんなところに、親切そうな海鳥が一羽やってきていうことには

「おいらのまねをしろ」

 え?まねるだけでだいじょうぶ?

「りくとうみの ちがいなんか たいしたことない」

 じゃ、じゃあやってみる。

 最初はふらふらしたけど、すぐに慣れた。

 海鳥は

「このまえ かにとさるが うつぼと はなしてた」

 カニとさる?さるって桃ちゃんの家来の?

 今、どこにいるの?

「そんなことは しらない」

「おにを しまに つれていく」

 え?えええ?鬼がこの近くにいるの?

「おいらは みていないけど おに つれていく はなしだった」

 そう。だったら…


 一方、さるは、鬼と話していた。

「俺たち、おまえのことちょっと気にしててさ。

 なんていうの?ほんとは鬼が島に帰りたいんじゃないかって」

 すると、鬼が少し顔をゆがめた。

「こっちは、帰る手はずは、整えたんだ。もし、そうなら、正直に言ってくれないか」

「ホ、ホントハ カエリタイ デモ ナカマ キット ユルサナイ ウラギリモノ」

「それは、俺たちも援護するから」

「ホントカ ソレナラ カエリタイ」

 話が付いた、それなら、出発しようということで、海へ向かう。

 浜辺に着くと、棟梁が、鬼が乗っても沈まない大きさの船を用意してくれていた。

「いつかは、こんな日が来るんじゃねえかと、思っていたんでね」


 ウツボを先頭に、船は出航する。鬼が島までは、一時いっときもあれば着く予定だ。

 途中、海鳥がやたらと鳴き騒ぐのに、辟易へきえきしたが、事故もなく鬼が島に到着。

 浜に着くと、渋面じゅうめんをした鬼どもが、気色ばんで待ち構えていた。

「ヨク カエッテキタ ハナシヲ キコウジャネエカ」大将格の鬼が言う。

「こいつは別に悪くはない」さるが応じる。

「マアイイ イマ キジヲ ツカマエタ ノモウジャネエカ」

 え?きじ?それは、桃太郎のキジなんじゃなかろうか。

 大将が、定位置に着くと、他の鬼も車座になった。

 さるたちは、大将と向かい合わせの位置に座る。

 そこへ、下っ端が一羽の鳥を連れてきた。

 脚をつかまれ、逆さになって気絶しているのは、まちがいない、桃太郎のキジである。

(げ!?何やってんだ、こいつ)

「な、なあ。もしかして、こいつ桃太郎のなんじゃ…?」

「オウ オレモソウオモッテ ツカマエテオイタ」

「できれば、返してくんない?」

「イヤ ソレハ デキナイ ソイツカエス オレタチ オマエラニ ヤラレル」

「いや実は、桃太郎、行方不明なんだよね」

「・・・ ソンナコトハ カンケイナイ アイツ モドッテクル」

 い、いやいや待ってくれ。俺たち、ずいぶん予定と違うことしてるんだし、鬼だって倒されるとは限らないんじゃ・・・

 とにかく、まずはキジをどうにかしないと。


 思案にくれるさるだった。

                       つづく

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