第2話
「ねーねー、前どこいたのー?」
「前は九州の方に居ました」
「えー、訛ってないじゃん」
「訛りの強いところではなかったので」
「部活とか決まってる?」
「いえ。学校に慣れてからで大丈夫といわれています」
「彼氏とか居る?居た?」
「……ノーコメントでお願いします」
お隣は転校生である星川の周りに人だかりができている。クラス替え直後で先ほど自己紹介したばかり。自分お席の近くにも、初めましてなクラスメイトが多いだろうに。まぁ目新しいものに飛びつきたい気持ちは分かるけどさ。
記憶の中の星川はもっとよく笑ってたイメージだけど、今の彼女はあまり表情を崩さずクラスメイトからの質問に淡々と答えている。愛想がいいとはとてもじゃないが言えない。言えないけど、その整った容姿やスタイルから、それはそれで様になっているというか、堂に入っているとか、綺麗に見えるのだから不思議なものだ。
声色は少し大人っぽくなったけど、でも自分にとっては聞いてて心地良いと感じてしまう。これは昔と変わらない感覚だ。
俺もあの星川か確認したくてそわそわしてしまうけど、これは今日は無理そうだな。そう思った時、真人が強引に混じってくる。
「なぁなぁ、お前、星川か!?」
「え……?」
「俺だよ俺!田崎!覚えてねーか?」
「田崎……真人君?」
「そうそう!!やっぱり星川かー!ひっさしぶりだな!!」
お久し振りですと、たいして驚いた様子もなく静かに旧友との再会を済ませる星川。周りの生徒は昔ここら辺に住んでたことや真人の知り合いと言う事で更に賑やかになる。
性格は随分大人しくなってるけど、やっぱりあの星川なんだな。昔とのギャップに戸惑うけど、でも元気そうで何よりだ。そして綺麗になったものだとひとり感心してしまう。小学校の頃は可愛らしいとは思ってたけど、ここまで魅力的になってることに驚きもあるし納得もしてしまう。
「拓海?おい!拓海!!」
「あ?」
突然真人に声を掛けられ我に返る。
「どうした?」
「どうしたじゃねーよ!星川だぜ?あの星川!!」
「お、おう」
俺なんかよりもよっぽど嬉しそうに真人が寄って来る。テンションが上がってるのか、何時もより声がでかい。
「星川!覚えてるか?拓海だぜ!?」
「ええ……覚えてますよ」
「久し振り。覚えててくれたんだな。また会えて嬉しいよ」
対して星川は冷静だ。綺麗な髪を整えるように触りながら、こちらをちらりと見やって、何事もなかったかのように答える。昔のようにオーバーリアクションで喜んではくれないか。でもちゃんと分かってくれてたんだ。それが嬉しくて、照れ隠しに頬をぽりぽりとかいてしまう。
「み……星川さんも元気そうだな」
「体には気をつけてますので」
昔の癖でつい名前で呼びそうになってしまった。長い事会ってなかったんだ、昔馴染みとはいえ、いきなり名前呼び捨てはまずいよな、危なかった。
「えーと、星乃君……だっけ?あなたも田崎君と星川さんの知り合いなの?」
「ああ、幼馴染なんだ。真人とは腐れ縁だけど、彼女とは小学校の途中ぐらいまでの話」
まだ名前も覚えていないクラスメイトから声をかけられる。転校生の星川、それに顔の広い真人の知り合いってことで、結構な人に名前覚えられちゃったかな。あまり目立つのは好きじゃないけど、真人の親友をやってればしゃーないか。
渦中の星川は俺が混ざんなくても周りと話が膨らみ盛上がってる。まぁ答えてる星川にその熱量はなく、冷静に淡々と質問に答えている感じだけど。
そして周りには男子が多い。そりゃそうだよな、こんな綺麗な子なんだ。昔は仲が良かったし、ぶっちゃけ「好きだ結婚しよう!」なーんて恥ずかしいやり取りもしてた。けど多感な時期に長いこと会わなかったんだ。向こうはそんなこと覚えてないか気にしてないだろう。
これだけ綺麗に成長してるんだ。向こうでも男がほっとかなかっただろうし、星川にも男の好みとか色々あるだろう。仲のいい友達ぐらいには戻りたいけど、今はこうやって眺めてるだけでも幸せになれるんだから、それでいいか。本当、われながらちょろい性格だ。
星川がまたこちらをチラチラとみている。気にしてはくれてるのか。そんなことを思ってる間に始業式の移動となった。
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