第三十六話 目撃情報
そうしてゲンタとカヤが意図せず、しかし、カヤが内心で望んでいたかもしれない休暇を
それを
ただ、「後日、大久保様より追って連絡いたす」と答えるばかりであった。
そう言われてしまえば、ゲンタにそれ以上追及する気持ちはない。結局のところ、二人の命は大久保に握られているようなもので、どうせ殺されるのなら、せめて
しかし、カヤを死なせるわけにはいかないともゲンタは考えているから、安心している気持ちもあるのだ。カヤが何を考えているのか、聞きもせずにいるくせに。
「ゲンタ殿、カヤ様。大久保殿が本丸御殿へ来られたし、との
それから何日もしない内に迎えに来たのは、すっかり顔馴染みになった
挨拶程度に返事をし、支度を済ませた二人が
「ゲンタ殿」
「はい」
「
「はい」
「それは
「俺は……」
言いかけて、次の言葉が出てこない。
分からないのだ。
果たして自分は何を望んでいるのか。
「あなた方はまだ若い。この世界をもっと知れば、
「……はい」
そんな話をしていると、いつの間にか大広間に着いていて、上段の間には
「しばし待たれよ」
広く静かな空間に大久保の声がよく通り、二人はしんとした大広間の中央に、正面を向いて座した。
今回呼ばれたのも間違いなく
背後から聞こえる足音は五つ。
二つは入り口で止み、三つはゲンタとカヤの並びで止まった。
衣擦れの音が、座った気配を漂わせる。
「
大久保がそう言うと、今度は廊下から足音が三つ近づいてきて、ああ、これはそろそろ始まるなと、ゲンタは身構えるのである。
果たしてその足音はゲンタの予想通り、一つは案内の者で、二つは
大久保が労い、すぐに「
「
この緊張感のない声は白帝のものである。
その声と同時に
「
「大久保殿、目撃された際の
大久保に質問したのは
「ゲンタ殿から以前に報告があった格好と変わりござらん。欠けた
「心得た」
「
相も変わらず声に緊張感がないのは
「……
「それではいかん。是も非もなく、
「……
「おいおい、
このやり取りに、
「どうした、
「そちらの
「いかにも」
「しかも、
彼の疑問は尤もなことで、ゲンタ、
それだけに、
恐らくそれを考慮したのだろう。答えたのは
「
「平たく言えば、そうだな」
「ご安心召されよ。婿殿に嫁いでいた娘は既に引き揚げておりますれば、既に縁はございませぬ。加えてこれなる
「……そうか、覚悟ができてるってんなら、別にいい。むしろ、
「それもこれも、
それを聞いた
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