第三十四話 茶席
ゲンタは「朝廷が
「それではなぜ、
なお問いかける
「……祟りを恐れたのでは」
「その通りです。彼が即身成仏した直後、
これを
けれど
一人一人の祈りの力は、
手前勝手に贈った
「たった一つの
ゲンタは思わずそう呟いたが、
「それだけ
「それは、どういう……?」
陰陽の知識を叩きこまれたがための悪癖だろうか、ゲンタは既に耳を傾け始めている。もっとも、討伐令が後回しにされているための、ある種の余裕であるのかも知れないが。
「結界ですよ。君もおかしいと思ったことくらいはあるでしょう。なぜ、
「だとすれば、統治とは何をするのです」
「結界の完成により、そこな
「
「
「シルシが濃い者だけが
「
「結界は完成していないのですね」
「あくまでも私の考えに過ぎませんが、
「結界の完成には何が必要なんです」
「人々の願いの力。意志と言い換えてもいいでしょう。或いは法力、神通力、
「
「
ゲンタが相手をしてくれることが嬉しいようで、面から覗く彼の口は緩んでいるようにも見える。
しかし、住む家ばかりか命を失った者が多数いたあの事件を、嬉々として語るその口に、ゲンタもカヤも、手をぎゅっと握りしめた。
その様子も把握していることだろうが、
「でも、まだまだ足りません。結界の完成にはあなた方の強い力と、願いを引き出す更なる争乱が必要なのです。どうですか、ゲンタくんと
そう言われた二人は、けれど、黙ったまま
「ああ、そう言えば私としたことがうっかりしていましたが、
カヤの頬がピクリと動く。
「
誠意の感じられぬ声が、甘ったるいままカヤの胸をかき回し、そのまま声に出る。
「
カヤは今、どんな感情なのだろうか。
毛を逆立て、瞬きを忘れた瞳は充血し、見開かれたまま。
握りしめていた手をガっと開いて、右足を踏み出し、今にも
けれど、それ以上、動かなかった。
それ以上、動けなかった。
手を動かそうとしても、立ち上がろうとしても、転がろうとしても、カヤは体を動かせなかった。
掴みかかって殴りたかったはずなのに、懐の短刀で刺してしまいたかったのに、物音一つ立てられず、嗚咽一つも漏らせず、悔しくて情けなくて、どうしようもなくて、カヤは涙ばかりが溢れ出る。
そのとき、ゲンタが声を出した。
「お断りします。民の犠牲を厭わぬ国が滅ぶは
静まり返った空間を打ち破るような彼の重い声が、カヤの耳にすんなり入る。
「そうですか。では、お引き取り下さい」
そうしてカヤは固まったまま、ゲンタに小脇に抱えられるようにして庵の外に出て、そこでようやく体を動かせるようになった。
「
庵が見えなくなると、ゲンタは木道に腰かけて、
カヤはずっと顔をむくらせていて、それが
「
「ゲンタ、どうしてあいつの首を獲らなかったのよ!」
「勝てると思うか?」
「……むぐ」
そのように聞かれれば、カヤの脳裏には
ゲンタの心情は分からないが、カヤの憎しみは
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