第三十三話 千明岳
その
けれど、五〇年前のある日を境に突如として煙を吐かなくなり、噴火することもなくなった。同時に、近くの温泉も徐々に温度を失いつつあるが、信仰は失われておらず、今も崇敬を集めている。
その黒い山肌をゲンタとカヤが登っていた。
ガレ
出立の朝、「
「
「おりませぬ」
「祭事のときのみであるか?」
「
このようなやり取りがあり、まずは
道中は
風は弱く、空は
見えるのは、気泡のようなものが無数にある不思議な形の岩と、
そうであるから、
その代わり、二人そろって一つ息を大きく吸い込んでから、
少し離れたところにある、もう一つの建物だ。
となれば、そこに
まだ庵まで四〇間はあろうというのに、ゲンタは鳥の
そのまま如何なる
「どうぞ、お入りなさい」
それはゲンタが
それは、雪が降り積もる中でカヤが聞いた
カヤの唇が微かに震えたことをゲンタは見逃さなかった。
けれど、二人が躊躇しているところで、もう一度中から声がした。それは甘くて、粘り気のある声。
「罠などありませんよ。どうぞ、中へ」
ゲンタは剣を鞘に戻し、カヤを手で押さえながら間口の広い木戸を開ける。
そこから見えたのは、気持ちばかりの
内部は、障子を通った光だけがさし、薄暗い。
黄緑色の
「ご無沙汰しております」
「息災そうで何より」
感情を隠して挨拶をしたゲンタに対し、カヤは
そんな視線に
ゲンタは何も疑わず、「頂戴します」と茶碗を回して飲み干し、カヤは何も言わずに片手で
彼女はどうしたって憎いのだ。ゲンタを殺した目の前の男への憎しみは、そう簡単に消えるものではない。だけど、今ではないと、じっと我慢する。爆発してしまうかもしれない感情を、じっと抑えつけて、漏れ出てしまわないようにする。
ゲンタも
そして、先に口を開いたのは
「ゲンタくん、君は用事があってここにきたのでしょう?」
「あなたは……あなたは、いったい何を成そうというのか」
問い詰めるような声でもなく、かと言って穏やかな調子でもなく淡々と。
それを聞いた彼が、面の奥で何を思ったのかはゲンタには分からない。少し微笑んだように見えたのも、きっと気のせいなのだろう。
「それほど難しいことではありませんよ。私が目指すのは、
「葦の船でこの島へ来て、島の民たちに農耕の知識、紙と葦の船の製法を授けた男の神だと」
「
ゲンタもカヤも頷くことなく、ただじっと、口から下がない
「
その
そこに、
次々とそれらを成功させた
しかし、順調な日々は五年も経たずに終わりを迎えます。
急に出世した者は必ず妬まれるもので、その名声を恐れた
そのとき何の濡れ衣を着せられたのかは定かではありませんが、
そうして
「それで、その末裔である
「いいえ、違います。あなたは何か勘違いしているようですが、
「……まさか」
「その通り。
「だったら――、いや」
だったらどうして
「ふむ。君は……君たちは、なぜ
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