切断

私の彼は、浮気している。


『君ほど華のあるひとはいないよ』


そういう誘い文句で、まだつぼみだった私を咲かせてくれた。

だから、彼が何股かけていようと、やめられないんだ。


でも、さすがに気が付いた。

やばいな、って。

私、早く別れたいって思う。

それなのに、話を切り出せば、


『いまさらそんなの……無理だよ。僕たちは一生一緒だから』


とはぐらかされた。

でも、彼の言うことは、物理的に言えば正確だ。


そんな私にある日、転機が訪れた。


バサッ


朝早く、彼と私が繋ぐところを切る人がいたんだ。


棘は落とされ、そのおかげで今、さらに生まれ変わり、美しくなった私がいる。





僕は、久しぶりに埃の被った、思い出のある花瓶に、色どりをあげたいと思った。

なので、朝早くバラを切りに行った。

中でも美しい一本を飾ると、花瓶がうれしそうな気がしたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る