第6話-魔物
魔物が溜まる場所。そこは普通の動物達が森を荒らすのとはまた雰囲気が違ってくる。
いわゆる、障気という良くない物が溜まっていく。それは溜まり、淀み、魔物を引き寄せて、さらに瘴気を濃く、広くしていく。魔物というのは動物や人の死体に瘴気が入り込み新たに魂が宿るものとされていた。
それが歩いた場所は草木は不自然に枯れていく。だから分かるのだ。淀んだ空気と枯れた草木が現れたら近くに魔物が居る証拠になる。
「いるね。」
足元の草が枯れている。
「んじゃコッソリ確認して帰るか。」
ヤトは剣に手を掛け気配を消して隠れながら進んでいく。僕も少し離れて隠れながら先に進む。
『グルルル……』
隠れた木の先を、熊の形をした魔物が歩いていく。更にその先の瘴気は霧のように濃くなっていた。
この先が危険地帯だ。ヤトに後退しようと合図を送るとコクリと頷いたので、ソロリとその場を後にした。
「はぁ――。あの熊デカかったな。」
街道まで逃れてきた僕たちは、繋いであった馬の手綱を解き帰る準備をする。
「あんなの昔に比べたら小さい。ドラゴンの魔物が出た時は騎士団が壊滅したって歴史書にあったから。僕達はいい時代に生まれて良かったね。」
「そいや、なんでウチの国だけ魔物が少ないんだろうなぁ。」
馬に跨りながらヤトが言う。
「なんでって?」
「だって他の国じゃバンバン発生してんだぜ?トラスダン王国だけこんなに少ないのはおかしくないか?北の方じゃまったく魔物を見なくなっているらしいし。」
僕も馬に乗り、進路を王都に向ける。
「他国はそんなに凄いのか?」
「噂程度しか知らんが、そうらしいぞ?」
「ふーん。」
調べとくか?別に王家が何か特別な事をやっているじゃない。彼らは日々の権力闘争で大忙しだ。
どう調査をするか……そう考えた時に、僕はふと思い出した。
「そうえば、隣国の太子が結婚するとかで招待状が来てたな。」
ヤトが初耳だとばかりに聞いてくる。
「どこの国だ?」
「イングリス。貿易が盛んな開けた国で軍事力もこの辺じゃ一番じゃないかな。僕が行けるなら行ってみるか……。」
「え――……お前、外交できんの?」
ヤトが胡散臭そうに僕を見てくる。まったく失礼な奴だ。
「……僕これでも第三王位継承者なんだけど。」
「……見えねぇよ。」
顰めっ面でヤトが言った。
「行くんなら護衛で付いて行くから指名しろよ?」
「僕の子守も大変だな。」
僕はケラケラと笑いながらヤトと共に王都に向けて馬を走らせた。
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