第10話 町での出来事



 コモーポリという町を探検してみると、なかなか面白い。水が吹きでる泉? のようなものがあったり、お店ばかりだったり、人間の町は不思議だ。

 しばらく歩き、街中の時計見てみると短針が2の数字を指していた。お腹は減らないが口が寂しくなってきた。なので私は、人間が沢山並んでいるお店に入ることにした。みんな来ているということは、それほどの味が保証されているということだから、私は安心してお店の扉を開けようとした時の事だった。


「おい、そこのお前。ちょっとツラ貸せよ」


 取っ手に手をかけた瞬間、私より身長の高い3人の男に囲まれた。


「…なんですか? 用があるなら食べながら話しましょう。嫌ならお引取りを」


「あぁん? 女のクセに生意気だなぁ。おいお前ら、やっちまえ!」


 迷惑だなあ。

 指示された男2人は戦う気だったらしいので、私も応えてあげなければ失礼というもの。でもそれでこのお店のものが食べられなくなるのは、うん、いやだ。

 2人のうちの1人が私の荷物が入ったリュックに触れた瞬間、その男の左腕は腐り始めた。


「は? おい、なんだよこれ!」


 左腕が紫色に変色し、腐り始める彼の体。左腕はもう肩に引っ付く力なんて失われたようで、ぼとりと地面に落ちた。長く待たずとも全身蝕まれ、直ぐに死に至るだろう。

 私が彼に何をしたか説明しよう。簡単な話である。人間というのは限られた魔力の器がある。それを溢れさせれば良い。だからこの男の左腕に余計な魔力を注いでやったのだ。大量にとは言わないが、コップ一杯分の魔力を注入すれば常人ならば今の彼みたいになる。左腕の細胞の組織は魔力に耐えられなくなり壊死。人間の血液が回らなくなり、それを全身に巡らせれば終わり。手は動かないし、対象法はない。残念だったな。

 もしも腕を破裂させたいのならばもっと多くの魔力を注げば、風船のようにぱんっと爆発するだろう。1度経験が事あるので、やり方は習得済みである。


「う、うわぁぁぁぁぁ! 」


 ふん、ざまあねえな。

 私は入ろうとした店に背を向け、男3人の方を向く。いや、1人はもう人間でなくなってしまうのだが。


「な、なんなんだよお前! なあ、許してくれよ、ほんの冗談だろ? ぺ、ペスを治してやってくれよぉ!」


「……興醒めだ。お前たちのせいで気分は最悪だからね。そこで苦しんで泣くといいよ」


 既に立てなくなっており、横たわる男を見下ろす。フードのお陰で顔は見えていないが、最期くらい顔を見せてやろう。私はフードを取り、白い髪と翡翠色の瞳を持つ私の顔を見せてやった。


「ねえ。もし死んだらさ、フォティノースからプネヴマによろしく、って言っておいてね」


 じゃあね、と。

 私は顔が見えないようにフードを深く被り、野次馬を避けながら町の出口を目指し歩いた。

 良い町かと思ったのに、結局は人間って傲慢で自分勝手、やはり人間は滅ぼした方がいい。最初の村があんな感じだったから、油断していた。


「はぁ……」


 町の出口に差し掛かると、一軒家がぽつぽつとしか建っていなかった。この町には1日も、留まっていないのにもうお別れか。でももういいや。

 夕暮れが森の木々を照らす中、不機嫌な私はとぼとぼと首都へ歩いていた。



────


 私の名前はプネヴマ。死人を冥界へ案内する仕事をしている。

 冥界までは真っ暗闇で、この私が居ないと冥界に辿り着けない。そう、私は結構重要な役割を任されているのだ。


「それで、貴方名前は? どうして死んだんです?」


「ペスです…友達からはそう呼ばれていました…」


「ふぅん。ペスさんは何故死んだの?」


「それがあんまり覚えていなくて…。でも最後に白い髪の女の人が、『フォティ、ノース? からプネヴマによろしく』と言っていたのを覚えてます。それ以外はホントに何も思い出せない…」


「フォティノース様に殺されたの? 貴方運がいいわね! あの方はお優しいから苦しまずに死ねたんだと思うよ。良かったわね!」


 世間話をしているうちに、冥界に着いた。

 フォティノース様のお話をもっと聞きたかったが、次の魂もいるから。


「じゃあねペスさん。君が良い場所に転生出来ることを願ってるよ!」


「ご苦労だったわ。プネヴマ。さあ、裁判を始めます。」


 罪人ペスは、今から法廷にて裁かれる──。



────


 魔王城を出て何日経つだろう。かれこれ5日程だろうか。

 コモーポリという町を出た後、もう1つの町があったがそこはスルー。別に興味がなかったからとかそういう訳では無い。あと少し歩けばなんと、首都ペディアーダに着くからだ! ヴォールス帝国の王様が住んでいるという城もあるらしく、私は首都ペディアーダをかなり楽しみにしている。地図で見てみるとコモーポリよりも土地は大きいので、それはもう立派な都市なのだろう。


「楽しみだなあ」


 私は期待に胸を膨らませながら、坂になっている森をせっせと歩いた。

 

 そうして5時間程歩き続け、私は丘の上に立つ。時刻で言うとなんとなくだが、夜中の2時くらいではないだろうか。暗闇と静寂に包まれた城が見える。城壁の外、この丘を降りればもんをくぐってペディアーダに入ることが出来る。

 

「うわぁ、大きいなぁ」

 

 ここから見ても分かるくらいの大きさだ。けれども魔王城よりは小さいかな。

 

 疲れたしキリがいいからここで寝てしまおう。と私は植えられていた1本の気にもたれかかって、眠ることとした。また前みたいにきっと正午に起きるだろう。生活リズムを人間に合わせなければ、怪しまれていしまう。なのであの門をくぐったら先ずホテルの確保、それから探検としよう。よし。

 私はそこでも死んだように眠れた。ちなみに起きたのは、時間でいうところの4時くらいだろう。もう夕方である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る