77話 文明の素晴らしさ

「なんじゃ……これは?」

「殿、驚かしてすみません。それは、う~んなんと言えは良いか……そうそう行燈〔あんどん〕と思えばよいと思います。別に害がなく夜でも昼と同じくくらい明るく便利なものです。例え強風が吹いても明かりは消えません。火を使って居ないので火事になる心配も御座いません。勿論、光りに当たっても人体に害が御座いません」

「確かに明るいローソくの何倍もな。これなら目にも良い本を読んで居ても疲れないだろう」

それを聞いて少し安心したのか、懐中電灯を家来達の方に照らしてみた。

驚いた家来達はその光から逃げようと大騒ぎになった。その様子をみて酒井忠利は子供のように喜んだ。


「ほう誠に明るい。ロウソクの何倍も明るいではないか。本当に害がないのじゃな。未来とはなんと凄いものじゃ。世はこの様な贈り物を貰って日本一の果報者じゃ。では未来ではがロウソクや油は使わぬか」

「それは使い方が別にありますが電気というもので光ります。殿に満足戴ければ私も幸せで御座います。それし良かったらお酒の方も是非、召し上がってください」

「電気とな、その電気なるもは便利なものじゃな」

「電気は文明を変えました。これで一気に世界は発展していったのです。今から四百の未来に明治という時代に移って行きますが、日本は大きく変わる事になります」

「その電気の一部というのが、この行燈のような物か」

「はい、せっかくお招き頂きましたから、数日中その電気を使ってこの広間や殿のお部屋を明るくしてさしあげます」

「ほうそれは楽しみじゃ。ふむふむ、それは後でゆっくり飲ませて貰う。なるほどのう、そなたの話を聞いておると何日聞いても飽きる事はないようじゃな。用事がなければ暫く城中に居てくれんか?」

「それは有難い事です。私も用事と言っても何もする事が御座いません。本来の仕事も出来なくなりましたから」


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