76話 懐中電灯

「佐伯殿、世は百年も待ってはおれん。どうじゃろう、そちの力で川越にさつまいもを栽培してくれるか」

「お殿様がそうおっしゃるなら私なりに努力して見ます。但し私は農業には疎いので、地元の農家の方達と協力して栽培方法を考えてみましょう」

 雄一は川越をさつまいも栽培の為に土壌作りやどの芋が合うか取り組むことになった。


そう言って二つ目の箱から取り出した。あの懐中電灯だ。非常用に買った物で、まだ新品で箱の中にビニールに包まれて入っていた。誰もが雄一が出す物に目を奪われた。段ボール自体この世に存在しないしビニールだってなんなのか誰も分からない。それを取り出して電池を四本入れて殿に手渡した。

酒井忠利は中味を見るより先に見た事もない紙の箱とビニールに興味を引かれた。

「佐伯氏、紙の箱とは見た事もない、他にそのフワフワした透明の物はなんじゃ」

「まず段ボールという物で御座いますが。木を水に漬け高温で煮て柔らかくして紙を作ります。紙を何重にも重ねて丈夫な箱を作りました。折り畳みも出来て使い道は多く色んな物を保存できます。更に透明の物はビニールと申しまして、石油から作った物です。水にも強く、これは湿気を防ぐにも役立ち、やはり使い方は豊富にあります。ただ私に作って見ろと言われも知識がありませんので、やはり皆様方と協力し考えて見ましょう」

「そうじゃな。全て佐伯氏が出来る訳でもないし専門知識が必要じゃな」


段ボールとビニールを簡単な説明した所で懐中電灯の使い方に移る。

「殿、そのボタンを押して下さい」

酒井忠利は子供が玩具を与えられたように興奮しながら、その懐中電灯を眺めながらスイッチを押した。すると白く透明な光が放物線を描き、家老の本田良成の顔を照らした。驚いたのは本田良成だ。ワァーと、のけぞり後ろに倒れた。

だが驚いたのは家老だけではなかった。酒井忠利も家来も仰天してしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る