75話 さつまいも

そこで隣にいる家老の本田良成が口を挟んだ。

「殿、それは琉球の国で栽培され現在九州で作っているとか聞いた事があります。そして薩摩で栽培するようになり、さつま芋となったようです。それが、なんで川越に?」

「爺、そちは黙っておれ。佐伯氏に聞いておるのじゃ」

「はは~失礼いたしました」

「いや、ご家老様の言うとおりで御座います。琉球から更に薩摩に渡り、そして川越に伝わるのは今から百年後になりますが土地が合っているのか、今では川越と言えば、さつまいも日本では有名です」

「なに川越藩にさつま芋が栽培出来るのは百年後と申すうか」

「ハイ残念ながら歴史的にはそうなっております」

「なるほどの~我が藩はこれといった特産物がないから、そのさつま芋なる物の栽培を考えねばならぬな」

「このさつま芋は野菜であれながら、とても甘いのです。しかも主食として良いほどです」

「野菜なのに甘いと申すか。それは良い。なんとしても我が藩でも栽培したいものじゃ」

「更におやつ代りにもなります」

おやつの語源は江戸時代中期頃までは一日二食だったため、「八つ刻(やつどき)に小昼(こびる)」といって間食をしたことから、この時間の間食のことを「おやつどき=おやつ」というようになった。

「おやつ……それは(やつどき)の事か、ほうそれ良い。握り飯より旨いであろう」


「わたしは農業の方は疎いので書物を調べ、栽培方法を一緒に学びましょう」

「お~それは良い是非協力して貰えぬか」

「はい、何方か栽培に詳しい方を紹介して頂ければ一緒に進めて参りましょう」

「うむ、佐伯氏。よしなに頼む」

川越藩の殿に頼まれれば、さつま芋をなんとしても栽培して見たい。例え歴史が変わろうと、川越に百年早くさつま芋の栽培が始まっても問題ないだろうと雄一は思った。


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