71話 CDから歌が流れた

「お殿様、如何でしたか。少しは信じて貰いましたでしょうか」

「なんじゃあの光るものは……信じられないもの見せて貰った。そなたを信じるしかあるまい」

「どうでしょう。この車に乗って見ますか」

すると家老の本田良成が慌てて止めた。

「殿、なりませぬ。殿に万が一の事があっていけませぬ。別に佐伯氏を疑う訳ではないが、これも某(それがし)の役目、分かって下され」

「これは失礼致しました。これ以上驚かせはいけません。あとはまた城内で説明致しましょう」

「これ半兵衛、そなたがこの車なるもので府中から一緒に来たのか」

「はいそれは乗り心地が良く、とても便利なものでした」

また秋山半兵衛が忠利に寄り添え歩きながら何やら説明しているようだ。多分、自分が車に乗ってきて安全な乗り物だと説明しているのだろうか。

「ではお殿様、最後こんなものはどうでしょう」

雄一は車のコンポに民謡のCDを入れ音量を最大にして左右のドアを開けた。これで大勢の人に聞こえるだろう。そしてスイッチを入れた。


♪ ヤーレン ソーラン ソーラン

ソーラン ソーラン ソーラン (ハイ ハイ)

沖の鴎に 潮どき問えば わたしゃ立つ鳥 波に聞け~~~

 

すると殿を始め。皆の者が驚いた。かなりの人数の者が何処かで唄っている。だが姿は見えない。キョロキョロ見渡しが誰も居ない。

「佐伯殿、この者達は何処で唄っているのじゃ」

「殿、何処にも居りません。この車の中にある機械から音が出るだけの仕組みです。これも未来の科学です。如何でしょう。私が未来から来たことを信じて頂けますか」

「もう驚くばかりじゃ、そなたが未来から来たのは間違いないようだのう。では城の中で続きを聞かせてはくれぬか」

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