72話 未来の酒
再び城内に戻り殿が座ると全員が合わせて座り直した。
「佐伯氏とやら凄い物を見せて貰った。確かにお主の言う通り実際に見てみない分からぬものじゃのう。まさしく未来の物であろう」
「お殿様のご配慮ありがたく思います。そこで私なりに未来からの、お土産を持って参りました。気にいって戴くと良いのですが」
「お~なんと未来からの土産とな、それは楽しみじゃ是非拝見したいものじゃ」
雄一が持って来たダンボールを、家老の本田が家来に目配りすると家来二人が二箱のダンボールを雄一の隣に持って来た。この段ボールでさえ見た事がない。暑い紙が板のような役目を果たしている。
まず一つ目の箱から取り出したのは清酒二本とワイン一本とチョコレートだった。酒井忠利を始め家臣たちは、興味津々で箱から取り出し物を見ていた。
「お殿様、これが未来の日本の酒、それと西洋から伝わったワインと言いまして現在では日本で作られた米から作る酒と葡萄から作るワインで御座います」
「おお~さようか。長崎から異人が持って来たという酒か?」
「いや、かなり味は違うと思います。今から四百年も掛けて改良し作り上げられた良質の酒で御座います。恐れながら殿は日本でいや、世界で初めて味にする事になる酒でだと存じあげます」
その話を聞いて酒井忠利は更に機嫌を良くしたのか、興奮気味に手渡され日本酒を手に取りそのラベルを眺めた。
「これは川越と書かれておるではないか。それも見た事もない文字を使っておるではないか、筆ではなさそうだが?」
「はい活字といいます。四百年先の川越の地酒で鏡山と言う酒です。酒だけではなく川越の名産はさつま芋が有名で御座います」
「ふむふむ処で、この菓子のような物はなんじゃ」
「それはチョコレートと申しまして金平糖より甘い食べ物です」
「ほうほう、どれ食して見ようか」
忠利は嬉しそうに紙を開け取りして口に運ぶ。目の色が丸くなりニンマリとした。
「うむ実に甘くて美味い物じゃのう。気に入ったぞ。処でサツマイモとは? どのような芋じゃ」
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