69話 私は貴男方の子孫
「ハイ、信じて貰うにはあまりにも不思議な出来事で私自信、この時代にやってくるとは信じられない事でした。逆に殿さまを始め皆様方も、どこから降って湧いて来た人間だと思うでしょうが。もう一度詳しく申し上げますが、事の起こりはこうです。毎日のように雷が鳴り響き物凄い音が上空に響き、やがて近くに雷が落ちたようです。その時に強烈な閃光が走り光に飲み込まれるような感じでした。そのまま気を失ったのか暫くして目が覚めたら四百四十六年前の時代に移動したようです。勿論その時は何が起こったか分かりませんでした。でも調べてみると丁度、織田信長公が亡くなった時代でした。偶然にも侍達と遭遇し怪しい者と疑われ、追いかけられました。慌てて自分の屋敷へ逃げ帰りました。それから一週間後、またもや同じことが起きて、また何処かの時代に飛ばされ、それで今の時代に居る訳です。未来にも府中の地名は存在しおります。ですから私は皆様方の子孫なのでしょう」
「なんと二度も起きたと言うのか、しかも一度は信長公が亡くなった年とはのう」
「でもその時代なら私は戦に巻き込まれていたかもしれません。この時代でよかったです」
「ほほう、そなたが子孫と申すか。確か顔は日本人のようで言葉も同じだ。異国の者ではないことは分かった」
自分ながら上手い事を言ったと思った。子孫なのだから他人ではないと親近感を持たせれば悪い扱いはされないだろうとの含みもあった。周りがざわついた。酒井忠利も信じられないような表情だ。
「そんな事が本当に起きるとは……余も最初はただの噂だと思っておったが、なんでも動く鉄の小屋みたいな物に、乗って来たとか本田が申しておったが真か?」
「ハイ、それは自動車という乗り物で、機械で動きますが油を燃やして走ります。ただその油には地底深くに眠る燃える油です」
「ほう、それなら聞いたことがあるぞ。それがないと走れないのか。その油が無くなったらどうなるのじゃ」
「はあ、走れなくなります」
「左様か、本田そのような油は手配出来るのか」
「確か越後の国に、燃える油が取れたとか聞いた事が……」
「佐伯氏、そのような油で良いのかな」
「はあ多分、しかし精製しないと使えませんが」
「精製とはなんじゃ」
「その燃える油を、更に上質の油にする事です」
「上質の油とな。ただの油では駄目なのか。それは残念じゃ」
「この油は口にする事は出来ませんが、燃やして暖を取る事や灯りとしても使えます。まだ食べる油は菜種という野菜を加工して食用して使います。今回作った揚げパンがそうです」
「お~揚げパンとな。あれは美味であったぞ。よし、揚げパンと玉子焼きの礼じゃ、本田、早速手配致せ!」
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