65話 パレードのような気分
パレードのように両脇に馬に乗った侍が道を開けて行く。見た事もない動く小屋を人々は目を点にして見ていた。雄一も悪い気がしなかった。肝心の車は藁で覆われて奇妙な形をしている。ただこの動く小屋には未来が詰まっている。
「そうだ未来の証拠にもう少しお見せしましょう。 このスイッチを入れる音楽が流れます。父が好きだった民謡ですが聞いて下さい」
聞いた事もない楽器が流れて来た。それに合わせて民謡歌手が唄う。♪ヤーレン ソーナン ソーラン ソーラン ハイハイ 男度胸は五尺のからだ ドンと乗り出せ波の上チョイ♪
「佐伯氏、この箱の中に誰か隠れているのか?」
「まさか、これは音の出る機械です。前に唄った物をここで再現できる装置です」
乗っていた侍は驚く同時にテンポの良い曲にご機覗く嫌なったが人は何処に居るのか驚く。音が出る周辺を覗くが誰も居ない。
「なんじゃ、まさかこの中に人が隠れているのか?」
それは驚くだろう。録音したといっても意味が分からない。人が隠れていると思われても仕方がない。
「心配ありません。人は居ませんし、前に演奏して唄ったものを保存する装置ですから大丈夫です」
「もう驚きの連続で……心配ないというなら信用しよう」
「はい、これは楽しむ為の装置ですから素直に楽しんで下さい」
「そうか、それでは。なんと賑やかで踊りだしたくなるような感じがします。しかしこの中に人が入っている訳でもないようじゃが」
「ハッハハ人は入っていません。説明は難しいのですが、未来はそんな事も楽しめるのです。まず喜んで頂けて良かった」
何もかに異次元の世界である事を改めて認識出来ただろうか。その間にも車は走って行く。周りの通行人は唖然として不思議な動く小屋を見て口が開いたままだ。
まるで優勝パレードのような気分が味わえた。思ったよりも道は良かった。平均して道の横幅は三メートル程あった。戦国時代から平和が落ち着きを取り戻し、道路も整備されてきたようだ。しかし歩いている人も少ない。
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