64話 400年先の未来から来た男

「お~それは良い考えです。流石はお城のお役人様」

それから車の窓を除き藁で囲んだ。奇妙な形になったが刺激が少ないだろう。

結局、馬で先導する者二名と車に乗った五人の他は、別行動で歩いて持ってきた籠を担ぎ行く事になった。

宗右衛門達は少し心配顔で見送った。宗右衛門は少しガッカリしているようだ。やっと雄一と懇意に出来たのに川越藩に知られれば、きっと気に入られ召し抱えられるのじゃないかと。雄一と云う宝物を奪われた感じがしたようだ。しかし玉子焼きと揚げパン、更には水車を作り電気まで付けてくれた。感謝しても感謝し切れない。


車は静かに動き出した。助手席に座った秋山半兵衛は慌てて手すりに掴まり前を見た。馬や駕籠と違って揺れが少ない。今でいえば国道だが街道を歩く人々は先導する馬に乗った侍に命令され道を空けて進む。車の中に入った侍たちは興奮していた。車の中は豪華で運転席には色んな電気が付いている。籠とは比べ物にならない豪華な作り。座り心地も良く現代人が宇宙船に乗った気分なのだろうか。

「佐伯氏とか申されたな。お主は異国の者か? それにしてはお国の言葉じゃが、しかも侍にも見えないし町人にも見えない。どのような人物なのかな」

「確かに得体の知れない人物に見えるでしょうね。でも私は日本人ですが、そのなんと言って良いか、私はこの時代の人間ではなく四百年先の未来が来ました」

「なっ……みっ未来?? とな。信じられん。しかしこの車なる物もこの世の物とは思えないし異国でも聞いたこともない」

「まぁ私だって信じられません。まだひと月も経っていませんが、四百年先の言葉でタイムスリップト申します。時間を超えて瞬間移動したのです」

「そんな不思議なことがあるのか、四百年先の世界とはどんな世界なのじゃ」

「まぁそれはお城に着いてから殿と一緒に聞いて下さい」

「お~そうじゃのう。拙者が先に知っては殿に叱られるかもしれん」

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