61話  オートバイ

 だが半兵衛が驚くのは目の前のオートバイだ。前と後ろに車が二つ、前には行燈のような物が付いている。雄一がエンジンを掛けると聞いた事もない音がして、前の行燈のようなものが光った。バルーンバルーンとけたたましい音と共に馬より早く走って行った。


 半兵衛達は呆然としている。良く転ばないものだ。それにあの速さは恐ろしい。

雄一はオートバイに乗って再び家に引き返した。秋山半兵衛は呆然と見送った。まるでこの世の物ではない。

「話には聞いていたが、なんじゃあれは? 馬より早い乗り物か。奇妙な乗り物じゃ。よく倒れずに進むこと。器用な奴じゃ」

秋山半兵衛は遠ざかって行くオートバイを見て驚きの声を上げる。

雄一の方だって驚いていた。やっと平穏の日々を過ごしていたのに侍が出てくるとは。だがいずれはこうなるとは思っていた。ただ丁重にとか言っていたから取り押さえられる事はないだろう。


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