60話 秋山半兵衛との出会い

 城の者が会いに来たと言う。雄一は危機感を覚えた。怪しい奴だと捕らえられるかもしれない。最初にタイムスリップして侍に追われた事が頭を過る。このまま逃げようかとも考えた。だが逃げてばかりで生きて行けない。やっと木綿屋の人達と親しくなったのだ。

 しかしもう遅い。秋山半兵衛という侍が目の前にやって来た。奇妙な乗り物(オートバイ)を見て驚きのあまり茫然と立ち尽くした。異人どころの話ではなかった。奇妙な乗り物、見た事もない服装、玉子焼きやパンを作るというよりも、想像できない宇宙人? そして雄一の体型にまた驚く。秋山の身長は百六十センチ前後と、近くに居る町人よりは大きい方だ。

だが雄一はそれよりも二十センチ以上も背が高い。それでも秋山は平静を装い。武士の威厳を保った。


「おう、そなたが噂の大男、あっいや失礼致した。川越藩家臣、秋山半兵衛と申す。我が殿が是非にお会いしたいとの仰せじゃ、出来れば、一緒にご同行願いないか」

「はあ……しかしその駕籠に乗るのですか」

「殿が丁重に、お連れするようにと特別な計らいで駕籠を用意致した」

 籠を見た限り、とても雄一の体は収まりそうなかった。

「しかし俺、いや私は駕籠に乗った事がないし車では駄目かな」

「おう噂に聞いたクルマとな、確か馬より早いとか」

「ああ、それはオートバイで。車は道が良くないと走れません」

「そのクルマなる物を殿が見たいと仰せじゃが、是非とも見せてくださらんか」

「まぁ、いいですけど。道中ですれ違う人々が驚かれるかと困るのですが。そうだ、前を馬で先導して頂ければ着いて行きますが」

「確かに、そなたの体では籠が小さいようだ。それに担ぎ手も大変だし、ならクルマなる物で参られるか」

「ハイ、そうさせて下さい。先導して貰えれば周りの人も安心するでしょうから。では暫らくここでお待ちください」


 

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