57話 藩主,酒井忠利
その揚げパンと玉子焼きを藩主の酒井忠利(さかいただとし)に家老から届けられた。
「良成、それはただの玉子料理ではないのか」
「玉子は煮る物としか思っておりませんでしたが、玉子焼きなる物は鉄の器に油を入れて、砂糖など加えて焼く物だそうで、これを発案したの異人のような大男だそうです」
新しい物好きの、酒井忠利は興味津々で早速食べた。食べた途端に目を丸くした。
「おう~美味(びみ)であるぞ。冷めておるが、なかなかの味じゃ。作りたてならかなり美味いであろうな。だがこの揚げパンなるものは冷めいても美味いぞ。どうじゃ、その者を城に呼んで作らせてみろ。それに鉄のクルマとか異人のような大男とか、面白そうじゃないか、是非とも会ってみたい。さっそく手配いたせ」
「はは~しかし得体の知れぬ者、殿に何かありましては」
「何故じゃ、その者は一人だと聞いておる。一人で何が出来ようか心配ない」
「そう申させるなら、それでは早速に籠を手配して連れて参ります」
「うむ、そういたせ。たが丁重にな。もしかしたら我が藩に福をもたらしてくれる人物になるかも知れんのでな」
家老の本田良成(ほんだよしなり)から命を受け、秋山半兵衛(あきやまはんべい)は十人の家来と駕籠を用意し更に馬二頭と籠の担ぎ手を従えて川越から十一里の道のりを一昼夜半かけて府中に到着した。単純に四キロを一時間で歩くのが普通、籠を担ぐとなれば早くとも三キロしか歩けない。途中、休憩や食事時間もあり一昼夜掛かる事になる。
この川越藩の領地は広く、このような記事もある。
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