第54話 第二章 川越藩 水力発電

 それから数週間が過ぎた。揚げパンと玉子焼きの噂が街道筋に流れる中、佐伯雄一の噂も広がって行った。府中に異人のような大男が不思議な食べ物を作っている。   時々この世の物とは思えない鉄の乗り物に乗っているなど話題になった。玉子焼きとパンは木綿屋でも作れるがパンはパンを作る釜が必要だ。


 これまではトースターを代用していたが、それでは無理がある。次はトースターを改良した電釜を使う。これだけ売れれば雄一は毎日パン造りの日々が続く、それでは自分の時間が作れない。そこでもう一台パンを焼く釜を作り木綿屋に持って行った。もうその頃はパンの生地の作り方は木綿屋の若い衆が作れるようになっていた。電気釜を持ってきたが電気が必要だった。とてもじゃないがバッテリーを充電したものでは火力が足りない。そこで考えたのは水車で電気を作る事だ。幸いに木綿屋の裏に小川が流れている。そこに水車を作る事にした。水車は八綿屋に頼み、水車の職人に作らせた。周りの人は農家でもないのに水車を何に使うのか不思議がっている。雄一の要望も入れ理想の水車が出来た。


水車発電にも色々あるが最初はフランシス水車方式を考えたが、シンプルに水車小屋を作り歯車を連動させ、そこにベルトコンベアを取り付けモーターと接続させる。雄一は変圧器も取り付け問題なく一定の電流が流れる事に成功した。また上手く行かなければ別な方法を考えれば良い。水車小屋で電気を作り、そこから電線を伸ばし木綿屋まで繋いだ。そして電気コードを電気釜に繋いだ。電力的は問題なく電気釜は上手く行った。果たしてパンは出来るのか? なんと一発で成功だ。あとはパンを作る者たち釜の使い方を伝授すれば、雄一が自由を得られる。ついでにパン工房に蛍光灯もつけてやった。これで夜でもパンが作れる。


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