53話 雄一名は川越藩に知れ渡る

松三はフーフーと息を吹きかけ揚げパンを口に入れた。

「……うん。これは暖かく、そして柔らかく美味いですよ。これは最高に美味い」

すると他の者たちも一斉に手に取り食べ始めた。全員が美味いと感激した。

雄一は喜んだ。これでまたひとつ。この時代に新しい物を提供出来たことに。

「良かったぁ。やっぱ日本人はあんこが好きなんだ」

それから数週間が過ぎた。揚げパンと玉子焼きの噂が街道筋に流れる中、佐伯雄一の噂も広がって行った。府中に異人のような大男が不思議な食べ物を作っている。時々この世の物とは思えない鉄の乗り物に乗っているなど。噂が広がっていった。夢が広がる一方の佐伯雄一だったが、やがて川越藩が知る事となる。一回目のタイムスリップで侍と一戦交えた、しかし今度は避けて通れない時が来たようだ。



次回 第二章 川越藩


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