第51話 揚げアンパン
木綿屋の者たち試食してもらったが、あまり評判は良くなかった。味もないただの食パンでは無理もない。現在なら味はなくてもバターやジャムを付けるがコーヒーやハムサラダと一緒食べれば美味いのだが。現在ならバターやジャムを付けて食べるが、そんな物はないし。まぁ素人が作ったものだし不味いパンでは仕方がない。小麦は身体に良いと言っても誰も分かってくれない。これは大失敗かなと思ったが、ある事を思い出した。
「そうだ。アンパンなら受け入れられるだろう。現にあんこ入りの団子は売られている」
それから十日が過ぎた。雄一は家に閉じこもりアンパン作りに没頭した。工学博士だった自分が黙々とパン作りをしているから笑える。そしてなんとか完成した。だが本来のアンパンのように薄い皮のアンパンではなかった。どちらかと云うと硬いフランスパンのようだ。自分の技術ではこれが精いっぱいだ。フランスパンにアンを入れたような物だった。
早速、木綿屋に出向き食べさせてみた。木綿屋の者達はまた不味い物を喰わされるのかと、そんな疑いの目で見られた。まるでパン屋のセールスみたいだ。最初に口にしたのは松三だった。
「……うん? 中に甘い物が入っている……。うん、これは美味いけど」
「美味いけどなんだい?」
「う~ん。ちょっと固いかな」
「そうか駄目か。困ったなぁ」
「でも佐伯さま。前のよりずっと美味いよ」
「いや、もう少し工夫してみよう」
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