第47話 玉子焼きの売れ行きは上々
それから数週間が過ぎて、この時代の材料を使った新しい玉子焼きが出来上がった。木綿屋には三十人以上もの使用人が居て、大半の人は家族で木綿屋が用意した長屋で暮らしている。家族を合わせると百人にも登る。いわば社員寮だ。昼の食事だけは蔵の横に作られた飯場と言われる場所で食べる。その使用人への食事は、賄い人が数人で作っていた。
そこで雄一の提案で使用人の家族に空いている時間を利用して、使用人の家族に玉子焼きを大量に作らせて売り出してはどうかと持ちかけた。もちろん作った者へは手当も支払われるから嬉しい副収入になる。
丁度、街道筋で往来も多い。時には大名が大勢の家来を従えて通ってゆく。一般旅人も多い。宗右衛門はその話を聞き大乗りだ。さすがは商人。儲ける事には積極的だ。勿論、玉子にしても油にしても高級食材であり利益を得るならそれに上乗せした金額で売らないと儲からない。
その通りの前に新しく店小屋を建てて、玉子焼きを売り出した。此処は現在で言う甲州街道の往来も多い所だ。それと同時に土産用として味噌も置いた。この当時はなかった試食、と言う方法を雄一は教えた。最初は無料で配るなんて損をすると反対したが、損をして得をすると事を教えた。最初は高くて誰も買わないと思っていたが試食が効いた。こんなに美味いなら高くても食べて見たいと好評だった。噂が噂を呼び飛ぶように売れていった。本業の味噌より五倍以上も売れ、玉子焼きの元である玉子が足りなくなった。松三は手代達に農家を周り、玉子を仕入れてくるように号令を出した。
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