第46話 電気スタンド
因みに光を表す単位はルクスとかルーメンとかあるが因みにローソクの灯りは百七十ルーメン位(20ワット相当)六畳の部屋だと字がやっと読める程度の明るさだ。勿論ローソクの大きさによって変わって来るが。
まず土間という台所に持って行き、バッテリーに電気スタンド繋いでスイッチを入れた。当時の行灯(あんどん)にはロウソクを用いるものと、油を用いるものがあるが、その明るさは文字がやっと読める程度だったから、それに比べ蛍光灯の明るさは昼間の居間より明るく、またしても驚いた。電気スタンドの明るさは八百十ルーメル程度(60ワット)ロウソクの四倍の明るさだ。
「なっ何ですかこれは? 行燈の何倍も明るい」
松三驚くのも無理ない。こんなに明るいのは見た事がない。
明るくなった処で七輪に炭を用意して貰った。松三が七輪に火を付けてくれた。なにやら妙な物で火を起こしている。火打ち箱という物らしい。携帯用の物もあるらしいが、たばこを吸う人は火種を常に用意していたようだ。
「ではこれから作りますから、作り方を見ていてください。それと材料は持って来ましたが、次からは自分達で似たような物を用意して作って見てください。では始めます」
七輪の火力を強くするために竹筒で吹いて貰った。その係りは女中の八重だった。年の頃は十二~三歳くらいだろうか、普通なら残業時間だが、勿論そんなものはない。まして未成年者を働かしてはならないのだが時代が違う。朝起きて夜寝るまでが一日の仕事だ。次にフライパンを取り出して食用油の入ったボトルから少しフライパンに垂らした。今度はフライパンを見て目を丸くして見つめる。次から次と見た事もない物を出してくる雄一を手品師ではないかと宗右衛門は思った。この時代には鉄鍋はあるがフライパンみたいな物は初めて見る。玉子は木綿屋で用意してくれた。
面倒だから一気に十個を大きな器に入れて、掻き混ぜて白砂糖を適量に入れて醤油を少々入れて、掻き混ぜて熱くなったフライパンに流しこんだ。
ジュ―と音がして玉子が焼かれて行く。これは火の加減が難しい。焦げないようにするには苦労する。亡くなった母が父の好みに合わせて作ったものだ。
ほんのりと甘く、少し醤油味を加えた為、色合いも良く父は毎日でも食べられるほどの好物だった。作りながら、つい父の事が思い浮かび目頭が熱くなった。
やがて色合いが良くフワッと出来上がって来た。器用にクルクルと重ねて太巻きのような形に出来上がってゆく。時間にして十分ほどあっという間に出来上がる。
「ハイ、こんな処かな。あとは好きな形に切れば出来あがりです。それとフライパンと似たよう物を使って貰っても構いません。それとこの白いのは塩ではなく白砂糖です。代替として黒砂糖を使ってもかまいませんが」
どうやら木綿屋の人達は砂糖を塩と間違えたらしい。舐めさせてくれて云うので掌ら載せてやった。
「本当じゃ、甘い」
松三はびっくりした。当時砂糖と言えば琉球で取れた黒砂糖で一般庶民でもなかなか手に入らない代物だと聞くが、木綿屋は裕福なのか当時、手に入り難い物でもほとんど揃っていた。
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