第43話 雄一、料理を披露

「なんか難しいようだが、戦も無く侍が威張る時代じゃないようですな。八重、佐伯の旦那が食べてみろと、遠慮せんで食べみなさい」

「勿体ないで御座います。私のような使用人が……」

「ハッハハ、いま身分は関係ないと言ったじゃないですか。どうぞ食べてください」

それでも八重はモジモジしていると、松三が言った。

「八重、遠慮するな。食べて旦那にどんな味か話をしなさい」

八重は申し訳なさそうなコクリと頷いた。余分な箸がない事に気づいた雄一が、八重の掌に玉子焼きを持っていった。またまた八重と宗右衛門一家は驚いた。


「旦那、それも未来の国の作法ですか?」

「いや決まっていないが、箸がないので気配りかな」

顔を真っ赤にして八重は、掌に載せて貰った玉子焼きを口に運んだ。それでなくても丸い目をした八重は、更に目を丸くした。

「う、美味いです。こんな美味い物は生まれて初めてです」

「それは良かった。同じ玉子料理でも工夫によって沢山の料理が出来ます。特に玉子の料理は多いですよ」


四人は未来から来た雄一に、オートバイにライターに時計と文明の素晴らしさを見た。だが料理までも進化しているのには驚いた。

「佐伯さま、玉子焼きとは、どんな方法で作るのでございますか。私共は焼く事はな殆どなく煮て食べるですが」

と、とみが尋ねた。

「それは勿体ない。魚を煮て食べるのですか? サンマは焼いた方が上手いでしょう。では早速作ってみましょうか」

「えっ男の方が料理を作るのですか?」

「別に男女関係なく料理は誰でも作りますよ。私の時代がコックと言って料理を作るのは男が多いのですよ」


「私共は、料理は全て煮るものだと思っております。それにどんな道具必要なのでしょう。カマドの方にお出で下さいませ」

そう言って台所に案内されたが、あまりにも違う台所だった。一応、浅いが流し場はあった。水は水瓶の中に入っている。飯を炊く釜戸はあるが、とても玉子焼きを作るには不向きだった。

「う~ん七輪はありますか? それと鉄の鍋か何か?」

フライパンのような物はなく、玉子焼きを作るには不向きだった。

食用油は一応あったが、当時はかなりの高級品でしかも粗悪品としか思えない。これは当分、あの貸倉庫から持ってくるしかない。しかしいずれは無くなる。食用油も研究して料理に使えるように工夫する必要がありそうだ。

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