第41話 宗右衛門の家族

座布団の代わりにゴザで作った丸い物が置いてあった。

今日は上座の方に座らされて、右横に主人の宗右衛門と妻、左横に嫡男の松三が座った。テーブルの代わりに、お膳が各自の前に供えられていた。

時間を計ったように女中らしき娘がお茶を置いて去っていった。

昨日は突然だったので上座ではなく、下座だったが今日は一変していた。

「どうも佐伯の旦那。お待ちしていました。今日は妻の富が是非とも、お会いしたいと云うので同席させました。あのあと松三から聞きました。なんでもこの世の物でない乗り物をお持ちとか。昨日は突然、凄い物を見せて貰い、未来から来たと言われ驚きました。しかし貴方は確かに未来から来た人物と信用する事にしました」

「それは有り難い。まぁ信じろと言う方が、無理があります。自分だって未だ何がなんだか分からないのですから。信用して奥様まで同席させて頂くとは、もちろん喜んで。是非今日は食べて欲しいものを持ってきました。こちらから分けて頂いた玉子で作った料理です」


「ほう、それは楽しみですなぁ。とみ、佐伯さまにご挨拶を」

年の頃は四十歳前後くらいだろうか、品のよさそうな婦人だ。

その嫡男である松三は、おそらく二十歳前後と思われる。

その差は二十歳。平成の時代なら、随分と若い時に産んだ母親と云うことになるが、この時代十三、四歳で嫁に行くのも珍しくない時代だから遅く産んだ子供となるのだろうか?

「松三の母、富で御座います。主人からいろいろと伺いましたが大きな方で驚きました。失礼で御座いますが本当に未来から来たのでしょうか」

「これ! トミ。そのような事を失礼ではないか」

「いや気になさらないで下さい。私はこうして話を出来るのが今は一番の楽しみですから。では早速ですが。玉子焼きです」

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